アルゴリズムに基づく診療によって、小児科での抗生物質処方を減らす
Nature Medicine
2023年12月19日
意思決定を支援するデジタルツールの使用によって、臨床転帰へ影響することなく、小児への抗生物質処方が大幅に減ることが、タンザニアで行われた大規模なクラスター無作為化対照試験で分かった。
細菌の抗菌薬耐性を原因とする死亡は、2019年には127万人と見積もられており、アフリカのサハラ以南地域が最も多い。抗生物質の過剰使用が、耐性を持つ病原体の増加の主な原因の1つであり、抗生物質の使用量は過去数十年にわたり一貫して増え続けている。必要のない抗生物質の処方が多くの診療で見られることは、これまでの研究で明らかにされている。
Rainer Tanらは今回、小児科の診察用に、臨床上の意思決定を支援するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、ポイント・オブ・ケア検査(臨床現場即時検査)を使用して、WHOの指針に従って診断や関連する治療法を助言する。Tanらは、タンザニアの保健医療施設20カ所で11カ月間にわたって行われた計2万回以上の診療例を対象に、このツールが抗生物質の処方の抑制に効果があるかを調べた。その結果、ツール未導入施設での抗生物質の処方は70.1%だったのに対し、ツールが使用された診療での処方は23.2%だったことが分かった。処方の減少が、患者に有害な影響をもたらした例はなく、研究の期間中に観察された治療の失敗率にも差はなかった。
Tanらは、ツール(アルゴリズム)導入施設であっても、25%の患者の診療にはツールが使用されていなかったので、ツールの使用を徹底する必要性が明確になったと述べている。一方で、このツールは抗生物質の処方を安全に減らす上でコスト的にも技術的にも大規模な利用拡大が可能であることが、今回の研究で分かったとも述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02633-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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