生態学:人間が引き起こした鳥類の絶滅は過小評価されている
Nature Communications
2023年12月20日
後期更新世以降に人間のために絶滅した鳥類が約1500種に達したという推定結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この数は、これまでの研究による推定値の2倍に相当する。著者らは、これ以上の絶滅を避けるために、現存する在来鳥類を緊急に保護することが必要だと強調している。
鳥類の絶滅には、現代の人間活動に関連した原因がいくつも考えられる。例えば、生息地の減少、乱獲、侵入種の導入などである。鳥類の絶滅率に関するこれまでの分析研究は、人間による詳細な記録が残されている絶滅の観察例に注目していたため、わずか500年前ごろから現在までの観察例に限られている。しかし、正式な絶滅の記録が作成されるようになるまでに絶滅してしまった鳥類種が想定されるため、この手法では、人間活動に伴う生物多様性の減少の規模が過小評価される恐れがある。
今回、Rob Cookeらは、知られている鳥類の絶滅の大部分が島嶼域で起こったと考えられていることから、化石記録を利用して、島嶼域(フィジー、ハワイ、ニュージーランド、その他の西太平洋諸島を含む)で絶滅し、その記録文書が残っていない鳥類種の数を推定した。その結果、後期更新世(12万6000~1万2000年前)以降に全世界の鳥類の約12%が絶滅し、絶滅の大半は完新世(1万1700年前から現在まで)に起こっていることが分かった。これらの絶滅の55%が、今回初めて発見された。また、この知見を人類が分散した時期と照らし合わせると、鳥の絶滅の最大の波は人類の太平洋への分散(西暦1300年ごろ)と関連しており、絶滅率は予想の80倍に達していることが分かった。太平洋地域で起こった鳥類の絶滅は、全体の61%を占めると推定された。Cookeらは、ハイビルドクロウ、シノトズロリキート、飛べない巨大鳥であるモア(9種)の絶滅が、この分散の波と関連しているという考えを示している。
今回の研究は、これまでに鳥類種の9種に1種以上が既に人間によって絶滅に追いやられており、それが生態系と進化に及ぼした影響は深刻であった可能性が高く、その影響を元に戻すことはできない可能性があると示唆している。Cookeらは、今回の研究で得られた数値が概算値にすぎず、今回の研究で用いた方法を考えると、この数値が過小評価である可能性が高いことを認めている。
doi:10.1038/s41467-023-43445-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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