心理学:WEIRD文化では金銭が強い動機付け要因になる
Nature Human Behaviour
2024年1月9日
金銭的な報酬は、WEIRD(西洋の、教育水準が高く、工業化され、裕福で、民主的)な国に住む人々の方が、非WEIRD国に住む人々にとってよりも動機付けの程度が高い可能性があることを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
金銭は、努力を要する行動の主要な動機付け要因であると考えられることが多く、金銭や金銭以外の報酬の有効性を理解することは現実的な意味合いがある。しかし、動機付けに関するこれまでの研究は主にWEIRD文化の人々を対象としており、得られた知見が非WEIRD文化に一般化できるかどうかは不明であった。
今回、Danila Medvedevらは、金銭的インセンティブと心理学的な動機付け要因に対して人々がどれほど懸命に働くかに関して、2つのWEIRD国(米国および英国)と4つの非WEIRD国(中国、インド、メキシコ、南アフリカ)で比較を行った。今回の実験において作業者は、固定給、固定給+労力がかからない心理学的介入、固定給+追加の金銭的インセンティブのいずれかを受け取った。
その結果、米国と英国の人々は、中国、インド、メキシコ、南アフリカの人々と比べて、金銭による動機付けの程度が心理学的介入より高いことが明らかになった。Medvedevらはまた、今回の研究の実験の1つにおいて、作業をやめても報酬を失う恐れがなければ、米国人の参加者の約半数が直ちに作業を放棄したと指摘している。一方で、メキシコと中国の人々は、懸命に働くべしという規範を強調する簡単な介入の方が、人々に追加の金銭を支払うよりも、努力を促す費用効率に優れた方法であった。また別の実験では、Medvedevらはインドの人々をヒンディー語か英語で試験を受けるように無作為に割り付け、このことが動機付けに及ぼす影響を調べた。その結果、参加者は、指示が英語でなされる場合には、金銭による動機付けの程度が心理学的介入よりも52%高かったが、指示がヒンディー語でなされた場合には27%に低下することが明らかになった。
Medvedevらは、今回の知見は、金銭的インセンティブは文化圏の違いに関わらず同等に動機付けするという仮定に疑問を投げ掛けるものであると示唆しており、金銭が持つ動機付け価値はWEIRD文化の人々において最も高い可能性があるとしている。一方で、人々が他者と協働する仕事や、給与なしで歩合給のみの仕事を巡っても、金銭の影響がWEIRD文化において同等に強いかどうかを探るためには、さらなる研究が必要であると指摘している。
doi:10.1038/s41562-023-01769-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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