天文学:木星の磁気圏内でジェットが検出された
Nature Communications
2024年1月10日
木星の磁気圏内に磁気圏シースジェットが見つかったことを報告する論文が、Nature Communicationsで発表される。太陽系の惑星における磁気圏シースジェットの存在は、地球だけでなく、最近になって火星でも確認されており、今回、木星にも存在することが分かった。今回の知見は、異なる惑星環境における磁気圏シースジェットの形成過程と、このジェットがそれぞれの惑星の磁場に及ぼす影響可能性についての理解を深めるかもしれない。
磁気圏シースジェットは、プラズマ実体の一種で、周囲のプラズマよりも高い動圧を有し、惑星の磁気圏(惑星の磁場の影響が及ぶ領域)の外層である磁気圏シースで発生する。地球の磁気圏シースにおけるジェットの形成と影響を研究することは、人工衛星の運用や衛星通信に影響を及ぼす可能性のある宇宙天気現象を理解する上で重要だ。磁気圏シースジェットは、最近では火星の磁気圏シースでも発見されており、水星にも存在する可能性がある。しかし、データが少ないため、他の惑星の磁気圏シースにジェットが存在するかどうかは明らかでない。
今回、Chao Shenらは、1979年に探査機ボイジャー2号が集めたデータを分析し、木星の磁気圏シース、すなわち木星の弧状衝撃波(バウショック)の下流(超音速の太陽風が木星の磁気圏によって加熱されて減速した領域)において、3例のジェットを検出した。そのうちの1例は太陽方向に流れており、2例は反太陽方向に流れていた。これらのジェットを地球と火星の磁気圏シースで検出されたジェットと比較したところ、ジェットのサイズは弧状衝撃波のサイズに比例することが判明した。今回の研究では、カッシーニ探査機のミッションで得られたデータの分析も行われ、土星の磁気圏シースに太陽方向に流れるジェットが存在する可能性を示す証拠が見つかった。Shenらは、水星と土星の磁気圏で発見されたジェットである可能性のある実体を他の惑星との比較に組み込み、こうしたジェットは太陽系の惑星の磁気圏シースにおいて普遍的な存在である可能性があるという見解を示している。
Shenらは、特に木星や土星のような巨大ガス惑星の周囲にある磁気圏は地球の磁気圏よりも強力であると予想されているため、今後の研究では、磁気圏シースジェットが惑星磁気圏にどのような影響を与えているかを調べる必要があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-023-43942-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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