気候変動:人為起源の温暖化が北半球の積雪量の減少に及ぼす影響
Nature
2024年1月11日
人為起源の温暖化が原因となって1981年から2020年までの間に北半球の積雪量が減少したことを報告する論文が、Natureに掲載される。
暖冬になると、雪よりも雨になりがちで、雪解けが進み、積雪量が減少するが、こうしたことが水の安全保障だけでなく、広範な生態系に影響を及ぼしている。季節的な積雪量は人為起源の気候変動の影響の指標になると予想されている。しかし、半球、大陸、河川流域のスケールで一貫した温暖化傾向が観測されている反面、積雪量の減少については同じ傾向が見つかっていない。
今回、Alexander GottliebとJustin Mankinは、人為的な温暖化が雪に及ぼす影響を調べるために、北半球における3月の雪塊の質量(積雪水量)の観測値と複数の気候シナリオにおける気温と降水量のデータを合わせて検討した。その結果、1981年から2020年までの間に人為的な温暖化が雪塊の減少に寄与したことが示唆された。著者らは、雪の気温に対する感受性は、広く一般化できるが、非線形の性質を有することを示した。これによって、今日まで積雪量の減少が広範囲に及んでいないことを説明できるかもしれない。著者らはまた、冬の気温が−8℃を超えると、雪の気温に対する感受性がわずかに高まることも指摘している。著者らは、北半球の雪塊の20%が、冬の気温が−8℃近くまで上昇しているか、−8℃を超えた地域にあり、将来的に積雪量減少が深刻化する恐れがあることを示した上で、北半球の人口の80%が、水資源を融雪に依存している河川(米国のミシシッピ川やコロラド川の上流、ヨーロッパのボルガ川やドナウ川など)の流域付近に住んでおり、春の雪解けの流水が急激に減少して水の利用可能量に問題が生じる恐れがあることを強調している。
著者らは、今回の知見から、積雪量の減少を明らかにするには、複数の情報源による雪塊のデータを使用する場合の方が、単一のデータセットを用いる場合よりも優れている可能性があり、減少傾向が特定された際の信頼度が高まることが示唆されたという見方を示している。また、今回の知見は、積雪量の減少が人為的な気候温暖化に起因することを示しており、積雪量の減少が将来的に加速して、水の利用可能量に関する問題が生じるようになる可能性が高いと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-06794-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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