化学:複数の自律型実験室をつないで国際的な共同研究を進める
Nature Communications
2024年1月24日
シンガポールと英国ケンブリッジに設置された2つの独立した自律型実験室(SDL:self-driving laboratory)による共同研究が成功したことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、この手法が、地球上の異なる地域に位置する研究室の間でのデータと物資の流れを促進するという難題の解決を通じて、一部のタイプの研究の効率化を図るために役立つ可能性があると示唆している。
実験装置の自動化は複雑な課題であり、大規模に進めるためには専門家のチームと高額の機器装置が必要となる。また、SDLは標準化がなされていないので、同じものは二つとなく、それぞれが研究者らの独自のニーズと制約条件に合わせて調整されている。こうした柔軟性は研究の規模が小さければ有用だが、それによってデータと施設・設備の共有が難しくなる場合がある。そのため、SDLを使った研究は、1つの組織内の大きな研究グループによって実施されることが多く、国際的な共同研究にはほとんど利用されていない。
今回、Markus Kraftらは、抽象的知識と言語を特定のハードウエアの実行に関連付ける動的知識グラフを使用して、2つの独立したSDLを接続し、単純な化学反応実験を最適化した。それぞれのSDLは、強化学習方式に従って有望な実験条件を選択し、実験の結果は共通の知識プールに格納され、新たな実験の条件を決定するための基礎知識として用いられた。この2つのSDLの基盤となるプラットフォームは異なっており、両者間のコミュニケーションはインターネットのみを介して行われたが、SDLの協調によって、データ生成の高速化、ソフトウエアやハードウエアの故障に対する回復力の向上、効果的なコミュニケーションと共同研究が実現した。
今回の概念実証研究は、クラウドコンピューティングによって利用可能なハードウエア資源をシェアする方法に似た形で、自律型実験施設間でのシェアリングと共同研究を向上させることにつながる可能性がある。
doi:10.1038/s41467-023-44599-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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