古生物学:小型恐竜は羽毛の生えた翼を羽ばたかせて被食者を怖がらせた
Scientific Reports
2024年1月26日
小型の雑食恐竜や昆虫食恐竜は、羽毛の生えた原始的な翼を羽ばたかせて、隠れている被食者をおびき出していた可能性があることを示した論文が、Scientific Reportsに掲載される。今回、著者らは、ロボプテリクスという名の恐竜ロボットを作製し、このロボットにバッタを脅かすいろいろな行動をとらせて、バッタがどのように反応するかを調べた。著者らは、今回の結果が、一部のタイプの恐竜において飛行能力を備える前に羽毛の生えた翼が進化した理由を説明するために役立つのではないかと推測している。
羽毛のある恐竜種の遺骸が数多く発見されているが、これまでのところ、恐竜の分類群の1つであるペンナラプトラに属する恐竜種だけが、飛行に必要な羽毛の一種である大羽(pennaceous feather)を持っている状態で発見されている。化石記録によれば、大羽は当初、飛行するために十分な強度がない小型の原始的な翼に生えていたが、その機能は現在のところ分かっていない。
今回、Jinseok Park、Hyungpil Moon、Yuong-Nam Lee、Sang-im Lee、Piotr Jablonskiらは、この原始的な翼が「flush-pursuit(おびき出して追跡する)」という方法による採餌に用いられたのではないかと仮説を立てた。これは、昆虫食性と雑食性の複数の現生鳥類種、例えばオオミチバシリ(Geococcyx californianus)やマネシツグミ(Mimus polyglottos)などで観察される狩猟戦略で、捕食者が翼と尾の対照的な色の羽毛を使って隠れている被食者を驚かせ、被食者が逃げ出したところで追跡し捕獲するというものだ。
著者らはこの仮説を検証するため、ロボプテリクスというロボットを作製した。このロボットは、ペンナラプトラの一種であるCaudipteryx(クジャクほどの大きさの二足歩行の捕食者で、約1億2400万年前に生息していた)のサイズ、形状、推定移動範囲に基づいて作製された。そして、ロボプテリクスを使って、flush-pursuitの誇示行動のいくつかのバリエーションを模倣した。この誇示行動の全容は、原始的な翼を広げて尾を持ち上げ、翼を広げたまま一時停止してから翼を折りたたむというものだった。著者らは、この誇示行動に対するバッタの行動反応を観察した。ここでバッタが用いられたのは、バッタがflush-pursuitの誇示行動に反応するためであり、またCaudipteryxと同時代に生息していた直翅目に属しているためだった。
観察の結果、誇示行動で原始的な翼を使用することが、バッタが逃げる可能性と有意な正の相関を示すことが分かった。原始的な翼を使用した場合、実験に使用されたバッタの93%が逃げたのに対して、原始的な翼を使用しなかった場合は47%だった。また、原始的な翼の使用は、逃げるバッタとロボプテリクスの距離とも有意な正の相関を示した。さらに、原始的な翼に白い斑点があることとバッタが逃げる可能性との間にも有意な相関が見られ、尾に羽毛があることとバッタが逃げる可能性との間にも有意な相関が見られた。
著者らは、今回のロボプテリクスを用いた研究の結果がflush-pursuitに関する仮説の正しさを裏付けており、恐竜において羽毛のある翼と尾が最初に進化した理由についての新たな視点をもたらしていると結論付けている。
doi:10.1038/s41598-023-50225-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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