環境科学:対象を絞った肥料管理によってアンモニア排出量を削減できるかもしれない
Nature
2024年2月1日
イネ、コムギ、トウモロコシの耕地からのアンモニア排出量に関する詳細な推定データが機械学習法を用いて算出されたことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。このデータセットが得られたことで、アンモニア排出量の削減可能性を耕地別に評価することが可能になった。そうした評価を行い、これらの作物の栽培において効果的な肥料管理を行うことで、農業によって大気中に排出されるアンモニアを最大38%削減できることが示された。
大気中のアンモニアは、地球全体の生態系だけでなく、人間の健康にも影響を及ぼす重大な環境汚染物質だ。人間活動によるアンモニア排出量の約51~60%は作物栽培が原因であり、この排出量の約半分に主要な主食作物であるイネ、コムギ、トウモロコシが関係している。しかし、特定の耕地に関連するアンモニア排出量の削減可能性を高解像度で定量化することは難しく、窒素投入量や地域排出係数などの詳細なデータに依存している。
今回、Yi Zhengらは、機械学習法を用いて、気候、土壌特性、作物のタイプ、灌漑農法、耕起農法、施肥農法などの変数に基づいて、世界中のイネ、コムギ、トウモロコシの耕作によるアンモニア排出量をモデル化した。Zhengらは、既発表文献の系統的レビューによって得られた2700件以上の観測結果からアンモニア排出量のデータセットを構築して、このモデルにデータを供給した上で、このモデルを用いて、2018年に世界のアンモニア排出量が4.3テラグラム(43億キログラム)に達したという推定結果を得た。また、Zhengらは、このモデルに従って肥料管理を空間的に最適化することで、イネ、コムギ、トウモロコシを原因とするアンモニア排出量を38%削減できる可能性があると算出した。そして、最適化戦略として、生育期に従来の耕起農法を用いて土壌深くに高効率肥料を施肥することが示された。
Zhengらは、肥料管理を実施するシナリオの下で、稲作がアンモニア排出の総削減可能量の47%を占め、トウモロコシとコムギの耕作がそれぞれ27%と26%を占める可能性を明らかにした。Zhengらの計算によれば、肥料管理戦略が実施されない場合には、2100年時点のアンモニア排出量が、今後の温室効果ガス排出量に応じて、4.6~15.8%増(2018年比)となる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-024-07020-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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