神経科学:脳刺激マッピングを神経学的治療法の改善に役立てられるかもしれない
Nature Neuroscience
2024年2月23日
脳深部刺激(DBS)を用いて脳内回路の機能不全をマッピングすることが、特定の神経疾患の治療法の改良に役立つ可能性があると報告する論文が、Nature Neuroscienceに掲載される。この知見は、これらの神経疾患を引き起こす脳内回路に関する理解を深め、新たな治療法の標的候補を明らかにする作業を支援するものと考えられる。
DBSでは、神経疾患を来す機能不全を引き起こしている脳内ネットワークを弱めるために、脳に電極を埋め込む手術が行われる。視床下核(視床の下に存在する小さな構造)のDBSは、パーキンソン病の治療に広く用いられており、ジストニア、強迫性障害(OCD)、トゥレット症候群の治療への利用可能性を調べる研究も行われている。しかし、それぞれの疾患における症状を最大限改善するためにどの脳内回路を刺激する必要があるかについては、厳密に解明されていない。こうした回路を特定できれば、もっと的を絞った効果的な治療戦略を構築できるかもしれない。
今回、Barbara Hollunder、Ningfei Li、Andreas Hornらは、過去に視床下核にDBS電極を埋め込む手術を受けたパーキンソン病、ジストニア、OCD、またはトゥレット症候群の患者(計261人)のデータを用いた。著者らは、これらのデータに基づいて、DBSによって調節されている脳内回路と、それが治療応答性とどのように関連しているかを明らかにした。その結果、視床下核と感覚運動皮質の相互接続がジストニアの治療に、視床下核と一次運動皮質の相互接続がトゥレット症候群の治療に、視床下核と補足運動野の相互接続がパーキンソン病の治療に、そして、視床下核と腹内側前頭前皮質の相互接続および視床下核と前帯状皮質の相互接続がOCDの治療に最も関連していることが判明した。また、著者らは、2つの独立したコホートを対象として、パーキンソン病とOCDに関する結果の検証実験を行った。さらに著者らは、今回の結果に基づき、将来予測を組み込んで、パーキンソン病患者1人とOCD患者2人の治療を指導した。これら3人の患者は全員、DBSによる患者特異的な治療が実施された後に症状が軽減したと報告した。
著者らは、以上の知見が、これらの疾患の根底にある脳内回路の変化をよりよく理解するために有用であり、これらの疾患の治療戦略を改善できる可能性があると結論付ける一方で、患者個別のデータを用いたさらなる研究と検証が必要だと述べている。
doi:10.1038/s41593-024-01570-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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