代謝:難消化性デンプンは腸内微生物相を介して体重減少を助ける
Nature Metabolism
2024年2月27日
食事への難消化性デンプン(プレバイオティクス炭水化物)の補充が、体重減少とインスリン感受性に対して有益に作用する可能性があることが、37人の被験者が参加した臨床試験の結果、明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Metabolismに掲載される。この研究では、難消化性デンプンが体重減少に及ぼすこうした作用の一因が、腸内微生物相の変化である可能性も示されている。
難消化性デンプンは、プレバイオティクス炭水化物の一種である。プレバイオティクスは、小腸では消化されずに大腸の腸内微生物相の細菌によって分解・利用される食品成分で、その結果、有益な作用を持つとされる代謝産物が生産される。
今回、Welping Jia、Huating Liらは、過体重または肥満に分類される37人の被験者を対象に、クロスオーバーデザインの無作為化プラセボ対照試験を行った。試験期間は20週を超え、その間に被験者らは、8週間にわたって1日当たり40グラムの難消化性デンプンを摂取し、それとは別に8週間にわたって1日当たり0グラムの難消化性デンプンを摂取した。被験者らは試験期間を通して、基本的な食事として、過体重と肥満の成人の予防と管理指針に従って、等エネルギーのバランスの取れた食事(1日3回)を摂取した。その結果、被験者らは、難消化性デンプン補充期間に体重が平均2.8キログラム減少し、インスリン抵抗性が改善した。プラセボデンプン摂取後には、このような効果は観察されなかった。
これらの効果は、腸内微生物相の組成の変化と関連していた。また、難消化性デンプンの補充によってビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)という種が増加することが分かった。著者らが雄マウスにB. adolescentisを補充する追加実験を行ったところ、対照マウスに比べて、高脂肪食によって引き起こされる体重増加が抑えられ、腸のバリア機能が改善したという。その上、食餌からの脂肪の吸収も減少した。
著者らは、これらの知見によって、食事への難消化性デンプンの補充によって過体重の人の体重減少が促進されることが明らかになり、プレバイオティクスを利用した減量介入の開発に役立つ可能性があると述べている。ただし、これらの結果を確認するためには、さらなる研究が必要だとも述べている。
doi:10.1038/s42255-024-00988-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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