気候:2023~2024年のエルニーニョ現象のために一部の地域で記録的な平均気温となる可能性が高い
Scientific Reports
2024年3月1日
全球平均気温に関する予報モデルを用いた研究から、今も続いているエルニーニョ現象のために、ベンガル湾、フィリピン、カリブ海を含む地球上のいくつかの地域で、2024年6月までの1年間の平均SAT(陸地、海洋、海氷上の表面付近の気温の平均値)が記録的に高くなる可能性があることが明らかになった。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。また、今回の知見から、中程度または強いエルニーニョ現象の場合には、同期間中の世界のGMST(陸地および海氷上の表面付近の気温ならびに海氷のない海域の海面水温を用いて推定された全球平均値)が記録的なレベルに達する確率は90%と推定されることが示された。
熱帯太平洋を中心に発生するエルニーニョ南方振動は、全世界の気候変動性の主たる駆動要素になっている。その温暖相(エルニーニョ)と寒冷相(ラニーニャ)の両方が気象条件に影響を及ぼし、エルニーニョ発生期に西太平洋から大気中に放出された熱が年間GMSTを急上昇させる。GMSTのわずかな上昇は、地域的な極端な高温事象が発生したときのSATの著しい上昇と強く関連していると考えられてきた。
今回、Congwen Zhuらは、予報モデルを用いて、2023~2024年のエルニーニョ現象によって、2023年7月~2024年6月の平均SATにどのような地域的差異が生じるかを予測し、1951~1980年のSATの平均値と比較した。Zhuらが2023年7月~2024年6月という期間を選んだのは、エルニーニョ現象の典型的なピークである11~1月が必ず含まれるようにするためだった。その結果、中程度のエルニーニョ現象のシナリオの下では、この期間中にベンガル湾とフィリピンで記録的な平均SATになると予測された。また、強いエルニーニョ現象のシナリオの下では、カリブ海、南シナ海だけでなく、アマゾンとアラスカの一部地域でも、記録的な平均SATになると予測された。またZhuらは、予報モデルを用いて、同期間中にエルニーニョがGMSTに及ぼす影響を予測し、エルニーニョが中程度以上の場合には、これまでのGMSTの記録が更新される確率が90%であることを明らかにした。中程度のエルニーニョ現象のシナリオでは、2023~2024年のGMSTが1951~1980年の平均値(基準値)より1.03~1.10℃高くなると予測され、強いエルニーニョ現象のシナリオでは、GMSTが基準値を1.06~1.20℃上回ると予測された。
Zhuらは、記録的な平均気温になれば、影響を受ける地域での異常高温の影響に対処する能力にとって脅威となる可能性が高いと警告している。また、SATが上昇すると、山火事、熱帯低気圧、熱波などの極端な気候事象の発生可能性が大幅に高まる可能性があり、その傾向が特に顕著なのが海洋域や沿岸域で、海洋の熱容量が高いために同じような気候条件が長期間にわたって持続すると指摘している。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を、Climate Action)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi:10.1038/s41598-024-52846-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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