幹細胞:羊水から作製したオルガノイドが、妊娠後期の発生モデルになる可能性がある
Nature Medicine
2024年3月5日
複数の組織タイプのオルガノイドを、妊娠中絶をせずに羊水試料から集めた細胞を用いることで作製できることが報告された。このオルガノイドは、妊娠後期の発生を解明する手段となり、先天異常の研究に役立つ可能性がある。
オルガノイドはヒト幹細胞から作られる三次元モデルで、胎児様組織に似せることができる。妊娠のモデル化用のオルガノイドを作る現在の方法(ほとんどは死後の胎児組織から作る)は、法や倫理の点から、通常は受胎後最長20~22週までのものしか入手できないため、妊娠後期の発生を研究する上で制約となってきた。
今回、Mattia Gerli、Paolo De Coppiらは、妊娠16〜34週の12人の妊娠において、出生前検査の際に採取された羊水由来の上皮細胞について詳しく検討した。一細胞塩基配列解読を行って細胞の特徴を調べることにより、胎児の胃腸、腎臓、呼吸器に起源を持つ上皮細胞を見いだし、単離した。これらの細胞がオルガノイドの作製に使用できるかを調べるため、著者らがこれらの細胞を培養して観察したところ、細胞が増殖を始め、2週間以内に、自己組織化した目に見える三次元構造のオルガノイドを形成することが分かった。細胞からは、組織特異的な、すなわち小腸、腎臓、肺の初代培養胎児オルガノイドが形成され、これらはその起源となった組織の機能的特徴を持つことが明らかになった。この技術を用いることにより、先天性横隔膜ヘルニアを持つ胎児の羊水と気管液の細胞から肺オルガノイドを作製したところ、このオルガノイドは、先天性横隔膜ヘルニアの一部の特徴を再現していた。
著者らは、この代替法は妊娠中絶することなく胎児オルガノイドを作製でき、長い間の倫理的懸念を解決し、妊娠後期段階の研究に使用できる可能性があることが、今回の研究によって実証されたと述べている。また、この手法によって妊娠継続中に自家的に作製した胎児の初代培養オルガノイドを提供でき、高度な出生前モデルや個別化治療の開発が可能になって、両親へのカウンセリングの改善に役立つ可能性があるとも述べている。ただし著者らは、これらの知見がもたらす影響を検証するには、さらなる研究が必要であることも指摘している。
doi:10.1038/s41591-024-02807-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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