地球科学:古い時代の南極の氷の記録によって過去の大気中CO2濃度に関する新たな知見が得られるかもしれない
Nature Communications
2024年3月6日
16世紀に人間活動の変化が大気中のCO2濃度の低下をもたらしたと考えられ、これは西暦1450~1700年の旧世界と新世界の遭遇によって南北アメリカ大陸での土地利用が大きく変化したことが原因だった可能性があることを示唆する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、約500年前までさかのぼる南極の氷床コアのデータに基づいている。
人間活動は、工業化を通じて、大気中のCO2濃度を変化させてきたことが知られているが、工業化以前もそうであった可能性がある。その一例として、16世紀に旧世界(この場合はヨーロッパ)と新世界(南北アメリカ大陸)の人々が接触して、パンデミックによる人口減少が起こった。このことが大規模な土地放棄をもたらし、固有の植生の再生、大気中からの炭素の再吸収、大気中CO2濃度の低下が起こった可能性がある。過去2000年間の氷床コアのCO2濃度の記録は、現在の前例のない大気中CO2濃度の人為的上昇の背景を示している。ただし、大気中CO2濃度の履歴に関しては、西暦1600年ごろなど、一部の時代について確かなことが分かっていない。
今回、Amy Kingらは、西南極氷床の端に位置するスカイトレインアイスライズで2018~2019年に掘削された氷床コアのCO2濃度を測定した。この氷床コアの深さは最大104メートルで、西暦1454~1688年のものと年代決定されている。測定の結果、CO2濃度は西暦1516~1670年に10年当たり0.5 ppmのペースで徐々に低下したことが判明し、陸域の炭素シンクは10年当たり2.6ペタグラムと推定された。Kingらは、この緩やかな濃度低下について、16世紀に旧世界の人々が新世界の人々と接触した後に南北アメリカ大陸で土地利用が変化したというモデルに基づいて推定されたCO2濃度の低下との整合性が高いと述べている。
Kingらは、氷床コアの記録は、工業化以前の時代に人間が大気の組成にどのような影響を与えたかを解明するための手掛かりとして用いることができるという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-024-45894-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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