生態学:オオメジロザメの個体数増加に海水温の上昇が関係している
Scientific Reports
2024年3月15日
米国アラバマ州の入り江の1つであるモビール湾では、過去20年間に海面水温が上昇すると同時に、オオメジロザメ(Carcharhinus leucas)の幼魚の個体数も5倍に増加していたことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
オオメジロザメは、世界中の温暖な沿岸水域の浅瀬に見られ、淡水環境と海水環境のいずれにも生息している。オオメジロザメは、獲物の生息数を調節することによって、沿岸生態系のバランスを取り、その健全性を維持するために役立っているが、ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)やイタチザメ(Galeocerdo cuvier)と並んで、サメ種の中で人間に害を及ぼすことが最も多い。
今回、Lindsay Mullinsらは、2003~2020年に実施された調査で捕獲・放流された440匹のオオメジロザメのデータを用いて、モビール湾におけるオオメジロザメの生息分布と個体数の変化を測定した。またMullinsらは、同時期に収集したリモートセンシングデータを用いて、これらの変化に関連する環境因子を調べた。
その結果、調査で捕獲されたオオメジロザメの個体数(1時間当たり)が2003年から2020年で5倍に増え、研究期間中に調べることのできたオオメジロザメが全て幼魚であったことが判明した。これと同じ時期に、モビール湾の平均海面水温が22.3℃(2001年)から23.0℃(2020年)に上昇した。また、Mullinsらが実施したコンピューターによるモデル化から、海面水温が22.5℃を超えると、オオメジロザメが存在する可能性が高くなることが明らかになった。さらに、2000年以降に沿岸部で都市化が進んだにもかかわらず、2003~2020年の調査中にオオメジロザメが捕獲される平均確率はモビール湾全体で上昇し、それが最も高かったのがダフネ市付近とモビール湾の西側海岸線沿いだった。
以上の知見は、気候変動や都市化に対するモビール湾のオオメジロザメの幼魚個体群のレジリエンスをはっきりと示しているが、Mullinsらは、この個体群が海面水温のさらなる上昇にどのように反応するかは明らかでないと述べている。また、Mullinsらは、アラバマ州の海岸線近くでオオメジロザメの個体数が増加していることが、例えば人間が釣り糸で釣った魚をサメが捕食することによって、遊漁の機会に影響を与え、オオメジロザメと人間の関わりが増える可能性があると推測している。Mullinsらは、沿岸生態系の健全性を維持する上でオオメジロザメが果たす役割を現地の漁業関係者に教えることで、潜在的な懸念に対処することを提案している。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 14(海の豊かさを守ろう、Life Below Water)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi:10.1038/s41598-024-54573-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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