環境:AIで洪水予報を改善する
Nature
2024年3月21日
人工知能(AI)モデルを使って洪水予報の精度を改善できる可能性があると報告する論文が、Natureに掲載される。この洪水予報システムは、現在の主要な予報方法を改善できることが明らかになり、大規模な洪水事象の警報をこれまでより早いタイミングで発することが可能になるかもしれないとされる。
人間が引き起こした気候変動は、一部の地域で洪水の発生頻度を高めている。現在の予報方法は、河川流量計(河川沿いに設置された観測地点)に依存しており、世界中に均一に設置されていないという制約がある。そのため、河川流量計が設置されていない河川では洪水予報を出すことが難しく、その悪影響は、主に開発途上国で痛感されている。
今回、Google Researchの洪水予報チームのGrey Nearingらは、既存の5680カ所の河川流量計を用いて訓練したAIモデルを開発し、7日間の予報期間において河川流量計のない流域の1日当たりの河川流量を予測した。また、このAIモデルは、短期と長期の両方のシナリオを用いて、洪水予測のための主要なグローバルソフトウエアであるGlobal Flood Awareness System(GloFAS)と比較され、検証された。
このAIモデルは、現行システムの同日予測と同等かそれ以上の信頼性を有する洪水予測を5日前に提示することができ、5年おきに再来する極端な気象事象の予測精度は、1年おきに再来する気象事象に関するGloFASの予測精度と同等かそれ以上だった。以上の結果は、このAIモデルが、これまでの方法より長い猶予期間で、河川流量計が設置されていない流域での小規模な洪水事象と極端な洪水事象の両方に関する警報を発することができ、開発途上地域のために信頼できる洪水予報が生成できる可能性が高くなることを示唆している。
doi:10.1038/s41586-024-07145-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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