化学:ちょっと立ち止まって体臭の化学組成の違いを調べてみた
Communications Chemistry
2024年3月22日
乳幼児とティーンエージャーの体臭の化学組成の違いを調べる小規模な研究の結果について報告する論文が、Communications Chemistryに掲載される。今回の研究で判明した違いの1つは、ティーンエージャーの体臭試料のみに含まれる2種類の化合物で、汗、尿、ジャコウやビャクダンの匂いがする。
今回、Helene Loosらは、乳幼児18人(0歳~3歳)とティーンエージャー18人(14歳~18歳)から集めた体臭試料の化学組成を比較した。これらの試料は、参加者が一晩着用した綿製のTシャツやボディースーツの脇の下に縫い付けた綿製パッドから採取した。この研究に参加した乳幼児の親とティーンエージャーは、研究開始の48時間前から強い風味の食品、香料入りの製品や洗剤を避けるよう指示された。
解析の結果、これら2つの年齢群の参加者の体臭の化学組成は類似していたが、ティーンエージャーから採取した試料には、パチュリアルコールに加えて、カルボン酸(3-メチルブタン酸、2-メチルヘプタン酸、オクタン酸、4-エチルオクタン酸、ドデカン酸、ミリストレイン酸)の濃度が高く、未知の臭気も含まれていた。Loosらは、カルボン酸の匂いを「チーズのような」、「フルーティーな、乾燥プラムのような」、「かび臭い、コリアンダーのような、脂っこい」、「ヤギのような」、「ろうのような、石鹸のような」、「土のような、草のような、青ピーマンのような」と表現し、未知の臭気を「ビャクダンや香水のような」匂い、パチュリアルコールを「土のような」匂いと記述した。また、Loosらは、ティーンエージャーの体臭試料にのみ存在する2種類のステロイド化合物(5α-アンドロスト-16-エン-3-オンと5α-アンドロスト-16-エン-3α-オール)を特定した。これらの化合物は、「汗、尿、ジャコウ」と「ビャクダンとジャコウ」の匂いがすると報告している。さらに「スミレのような」匂いのケトンα‐イソメチルイオノンと、「石鹸や香水のような」と表現される未知の臭気の濃度は、ティーンエージャーより乳幼児の体臭試料で高かった。Loosらは、今回の研究で採取した試料を分析したが、これらの化合物が、各年齢群の参加者全ての体臭試料に存在しているかは確認できなかったと述べている。
Loosらは、カルボン酸の濃度が高かったことやステロイドが発生していたことは、ティーンエージャーと乳幼児で皮脂腺とアポクリン汗腺(いずれも毛包に関連している)の活性に差があることに起因する可能性があるという見方を示している。Loosらは、パチュリアルコールとα‐イソメチルイオノンは、研究前に無香料製品と無香料洗剤を使用していたにもかかわらず残存していた芳香物質に由来する可能性があるという仮説を提示している。そしてLoosらは、乳幼児の体臭試料に不快な匂いを発するステロイドが含まれていないこととカルボン酸の濃度が低いことが、乳幼児の体臭がティーンエージャーの体臭よりも好ましいと評価される一因となっている可能性があると推測している。
doi:10.1038/s42004-024-01131-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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