生物学:妊娠中の母マウスの食餌が仔の顔の特徴に影響するかもしれない
Nature Communications
2024年3月27日
妊娠中の母マウスの食餌に含まれるタンパク質が、仔の顔の特徴に影響を与える可能性があることを示した論文がNature Communicationsに掲載される。この知見は、環境要因(例えば母体の栄養)が成長中の胎仔にどのような影響を及ぼすかを洞察するための手掛かりとなる。
顔の形状の形成は子宮内で起こる複雑な過程だ。先天異常(例えば、口蓋裂や頭蓋縫合早期癒合症)は、何らかの誤りが起こったときに発生する。その遺伝的原因は特定されており、環境からの入力もこうした疾患に影響することが知られている。一卵性双生児は、遺伝的影響と環境的影響の両方を共有しているが、それでも顔の特徴にわずかな違いがある。しかし、発生段階でもっと微細な顔の特徴がどのように形成されるかは、あまり明らかになっていない。
今回、Andrei Chagin、Igor Adameykoらは、ある方法を用いて、ヒト胚の顔の形態発生過程において活性化しているエンハンサー(遺伝子発現を調節するDNA領域)を探索した。そして、これらのエンハンサーをヒトの顔の特徴の多様性を説明するのに役立つことが知られている一連の遺伝子と照合した。これらのエンハンサーのいくつかは、栄養に応答して細胞過程を制御するmTORC1経路に関連する遺伝子と関連付けられた。マウスとゼブラフィッシュの初期胚発生中にmTORC1経路を活性化すると、顔の特徴が大きくなり、鼻軟骨の厚みが増した。これに対して、mTORC1経路を抑制すると、ゼブラフィッシュでは顔が長くなり、マウスでは鼻が長くなった。高タンパク食を与えられた妊娠マウスの胚は、低タンパク食を与えられた妊娠マウスの胚と比較して、mTORC1シグナル伝達が変化し、鼻殻が大きく、顎骨が低かった。
著者らは、母親の食餌の変化が仔のさまざまな顔の特徴を作り出す複雑な遺伝的機構と相互作用し、影響を及ぼす可能性があるという見解を示している。また、著者らは、mTORC1経路がヒトの顔の特徴の形成に関与している可能性があると結論付けているが、さらなる研究が必要なことも指摘している。
doi:10.1038/s41467-024-46030-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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