遺伝学:左利きに関連する希少な遺伝子バリアントを調べる
Nature Communications
2024年4月3日
タンパク質を変化させる希少な遺伝子バリアントとチューブリン遺伝子が、ヒトが左利きになることに関連しているという可能性を示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、利き手の遺伝的基盤の理解を進めるかもしれない。
左利きのヒトは全体の約10%にすぎない。利き手の制御において、右脳半球が優位な場合には左利きになり、左脳半球が優位な場合には右利きになる。利き手に関連する脳の非対称性は、幼少期に生じ、遺伝が関与している可能性が高いことを示している。これまでの集団研究で、左利きに関連するいくつかの高頻度バリアントが特定されている。これらのバリアントの一部は、微小管をコードする遺伝子に関係している。微小管は、細胞の形態維持に重要な足場である細胞骨格の一部を形成している。ただし、これらの遺伝子が利き手にどのように関与するかは分かっていない。
今回、Clyde Francksらは、利き手の遺伝的基盤をさらに調べるために、英国バイオバンクの35万人以上のデータを用いてゲノム規模のスクリーニングを実施し、利き手に関連すると考えられる、タンパク質を変化させる希少な遺伝子バリアントを探索した。この解析では、左利きの3万8043人と右利きの31万3271人が対象になった。集団レベルでは、タンパク質コード領域にある希少なバリアントを原因とする左利きの遺伝率は低く、1%弱であることが分かった。また、微小管タンパク質をコードするTUBB4B遺伝子のタンパク質コード領域に希少なバリアントが含まれている可能性が、左利きの人では2.7倍高いことも明らかになった。
また、Francksらは、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症に関連することが以前の研究で明らかになった遺伝子が利き手とどの程度関連しているかを調べた。Francksらは、以前の研究で自閉症に関連することが明らかになっている2つの遺伝子(DSCAMとFOXP1)が左利きにも関連している可能性があるという見解を示しているが、因果関係は断定されていない。
doi:10.1038/s41467-024-46277-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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