医学研究:希少疾患に対するmRNA医薬の臨床試験
Nature
2024年4月4日
希少な代謝疾患の1つであるプロピオン酸血症に対するmRNA医薬の初のヒト臨床試験が実施され、一部の患者で症状が軽減されたことが明らかになった。このことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この予備的な解析は、患者12人を対象として行われたもので、この医薬が安全であり、治療効果を発揮する可能性があることを示している
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの中には、mRNAを利用して、体内で特定のタンパク質を合成するという指令を伝達する治療法を使用したものがある。COVID-19ワクチンの場合には、ウイルスの一部を複製して免疫応答を促すタンパク質が合成される。mRNA療法は、希少疾患において異常なタンパク質や欠損したタンパク質を置換できる可能性がある。プロピオン酸血症は、タンパク質や脂肪の特定部分の代謝に用いられる酵素の欠損を特徴とする遺伝性疾患で、15万人に1人の割合で発症する。現在のところ、この疾患の基盤となる酵素の欠損に直接対処する承認薬はない。
今回、Stephanie Grünewaldらは、第1/2相臨床試験で、プロピオン酸血症において影響を受ける酵素の正常なサブユニットをコードできるmRNA治療薬(mRNA-3927)を評価した。この臨床試験には、1~28歳の患者(合計16人)が登録し、そのうちの12人について中間解析を完了した。その結果、この治療薬が投与された患者8人において、プロピオン酸血症の命に関わる恐れのある症状(代謝代償不全事象)の発生率が70%低下したことが分かった。この治療薬に関連した有害作用には、発熱、嘔吐、下痢などがあったが、いずれも用量を制限する有害作用ではなかった。
Grünewaldらは、今回の研究の限界として、サンプルサイズが小さいことと対照コホートがないことを挙げ、そのために、例えば、上記の知見の有意性を評価するための統計解析ができないと指摘した上で、臨床試験は今も続けられており、今回の中間結果は、mRNA医薬がプロピオン酸血症に対して臨床的有用性があるという可能性を示す有望な初期兆候だと述べている。
doi:10.1038/s41586-024-07266-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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