身体に触れられると精神的・身体的な健康が向上する可能性がある
Nature Human Behaviour
2024年4月9日
人間や動物から身体に触れられると、成人と小児で、痛み、うつ感情、不安感が軽減し得ることが、系統的レビューおよびメタ解析の結果から明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の研究から、身体接触が、健常者でも病気を抱える人でも、またあらゆる年齢層において、多数の身体的・精神的な健康転帰に有益であることが示唆された。
身体接触は人間にとって極めて重要で、新生児に最初に発達する感覚であり、人間が世界と相互作用する際の最も直接的な方法である。これまでの研究では、身体接触が身体的な健康にも精神的な健康にも有益であることが明らかになっていたが、特定の健康転帰に集中していたり、接触のタイプや接触する人などの他の変数の影響が考慮されていなかったりした。
今回、Julian Packheiserらは、計1万2966人が組み入れられた全212件の研究の系統的レビューおよびメタ解析を実施することで、身体接触が健康に及ぼす有益性について調べた。その結果、他者または物(ロボットや重みのある毛布)に接触した成人に健康上の利益を示す強力な証拠が得られた。しかし、精神的な健康へのより大きな利益は、物への接触に対してよりも、人間が他者に触れた際に見られた。同様に、接触のタイプ(マッサージやハグ)が違っても、成人において身体的または精神的な健康上の有益性に差は認められなかった。この結果は、新生児でも認められた。
また、頻繁な介入がより多くの有益な効果をもたらしたことから、接触の頻度も重要であると考えられた。接触介入は、臨床集団でも非臨床集団でも精神的健康の改善に有効であった。Packheiserらはまた、胴体など頭部以外の身体部位への接触ではなく、頭部(例えば顔面や頭皮)への接触によって、健康転帰が改善すること、さらに一方向的な接触の方が、双方向的な接触よりも有益なことを見いだした。
Packheiserらは、今後の研究では、異なる接触介入の有効性を大規模な対照臨床試験で検討することで、今回の結果のロバスト性を確認するべきだとする考えを示している。加えて、現在行われている研究の大半が中・高所得国の文化に由来するものであることから、接触介入が異なる文化圏でも同じように有効であるかどうかを調べる研究を実施すべきであるとも述べている。
doi:10.1038/s41562-024-01841-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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