材料:接着剤が海洋性軟体動物種の追跡に役立つ
Nature Communications
2024年4月17日
ヒドロゲル接着剤が、体が小さく壊れやすい海洋性軟体動物(例えばイカやクラゲ)を傷つけることなく追跡調査するためのセンサーの取り付けに使用できることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、海洋性軟体動物種の追跡調査は、海洋生態系とこれらの生物が気候変動にどのように応答しているかについて理解を深める上で役立つ可能性があると述べている。
海洋性軟体動物は、海洋生物のかなりの割合を占め、海洋生態系や商業漁業において重要な役割を担っているが、現状では、我々がこれらの動物種をモニタリングする能力には限界がある。海洋動物の動きを追跡するための一般的な方法としては、硬質接着剤、吸着カップ、物理的固定具などを使ってセンサーを取り付ける。しかし、これらの方法は、特に軟体種の場合に、行動の変化をもたらしたり、動物を傷つけたりする可能性がある。
今回、Xuanhe Zhao、Aran Mooneyらは、これまで医療用接着剤として使用されていたヒドロゲル接着剤を用いて、海洋動物の皮膚にバイオセンサーを迅速かつ簡単に取り付けることに成功した。著者らは、実験室実験で、イカ、クラゲ、ガンギエイ、ロブスター、ブラックシーバス、ホウボウ、ヒラメなど、さまざまな種類の動物(18匹)にセンサーを取り付けた。この接着剤は、塗布されてからも柔軟性を保ち、動物の皮膚の損傷を防ぎ、センサーを取り付けられた動物は通常通り行動しているようだった。次に著者らは、より自然な環境におけるヒドロゲル接着剤の使用をさらに評価するために、ポルトガルのアゾレス諸島付近において野生状態で生息しているヨーロッパオオヤリイカ(Loligo forbesii)にセンサーを取り付けた。この標識手順の所要時間はわずか90秒で、従来の縫合法よりも効率的であることが明らかになった。
著者らは、この方法によって野生海洋動物の標識がより迅速かつ容易になる可能性があると考えており、この接着剤の使用によって、海洋でのバイオセンシング能力を向上させ、その適用範囲を大型の海洋哺乳類や魚類から、柔らかく壊れやすい小型の海洋動物にまで拡大できる可能性があると提案している。例えば、負傷した動物に対する薬剤送達や創傷保護、あるいは動物の運動パターンの追跡などが想定される。
doi:10.1038/s41467-024-46833-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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