Research Press Release

潮汐せん断応力によって制御されるエンセラダスのトラの縞模様のプリューム

Nature Geoscience

2024年4月30日

土星の衛星であるエンセラダスの内部から繰り返し噴出する氷の結晶のジェットは、潮汐応力が生じさせる表面の割れ目に沿った動きによって説明できることを提案する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。

カッシーニ探査機はエンセラダスのフライバイ(接近通過)を行い、エンセラダスの氷殻を横切る4つの大規模な割れ目(「タイガーストライプ」と呼ばれる)に沿ったジェットの存在を明らかにした。このジェットは、表面下の海洋が起源と考えられる氷の結晶を、エンセラダスの南極上に幅広いプリュームとして噴出させている。観測結果から、ジェットの活動とプリュームの明るさは共に、土星の周りを32.9時間で周回するエンセラダスの日周潮と同様のパターンで変化していることが示されており、潮汐応力がタイガーストライプの割れ目を引っ張り、ジェットの活動を増加させているという仮説が立てられている。しかし、この仮説は、プリューム活動のピークが潮汐応力のピークの数時間後に起きていることや、プリューム活動の2番目に小さなピークがエンセラダスが土星に最接近した直後に観測されていることを説明できない。

今回、Alexander Berneらは数値モデルを用いて、エンセラダスの氷殻に働く潮汐応力によって引き起こされるタイガーストライプに沿った変形をシミュレーションした。シミュレーションでは、タイガーストライプの割れ目に沿った境界面は、摩擦力学によって動きが制御されており、軌道を周回する間に周期的にすべりと固着を繰り返した。Berneらは、このタイガーストライプに沿った周期的な横ずれの動き(カリフォルニアのサンアンドレアス断層に似た左右のすべり)が、観測されたジェットの活動パターン(主要なピークと二次的なピークの両方を含む)と一致することを見いだした。

今回のモデルでは氷殻の変形も調べたが、噴出過程については調べておらず、Berneらは、すべる断層に沿った摩擦過熱は観測された氷の結晶を説明するためには十分ではないことを示唆している。Berneらは、潮汐が引き起こす動きが、タイガーストライプに沿って曲がったところでタイガーストライプの局所的な開放をもたらし、地球の横ずれ断層に沿って観測される局所的な火山活動と同様の噴出を促進しているという仮説を立てている。

doi:10.1038/s41561-024-01418-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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