Research Press Release

動物学:アフリカゾウ同士はどう挨拶するのか

Communications Biology

2024年5月10日

アフリカゾウ(Loxodonta africana)は、相手のゾウが自分を見ているかどうかによって、相手に対する挨拶の仕方を変えている可能性のあることが、9頭のゾウの研究で明らかになった。このことを報告する論文が、Communications Biologyに掲載される。また、今回の研究では、ゾウが挨拶をする際にジェスチャー(例えば、耳をパタパタさせること)と発声(例えば、トランペットのような声を出すこと)の組み合わせを変えており、そうすることで個体識別を容易にし、社会的な絆を強めている可能性のあることも分かった。

これまでの研究で、ゾウが発声と身体の動きを伴う挨拶の儀式を頻繁に行うことが報告されている。しかし、こうした身体の動きがコミュニケーションのために用いられる意図的なジェスチャーなのか、また挨拶の際にジェスチャーと発声がどのように組み合わされるかは分かっていない。

今回、Vesta Eleuteri、Angela Stoegerらは、2021年11~12月にジンバブエのJafuta保護区に生息する半飼育下のアフリカゾウを観察し、ゾウが挨拶をするときの発声と身体の動きを調べた。著者らは、89例の挨拶事象を観察し、これには1282例の挨拶行動が含まれていた。そのうちの1014例が身体の動き、268例が発声だった。

著者らは、ゾウ同士が挨拶をする際に、特定の発声とジェスチャーの組み合わせを用いることを発見した。例えば、耳をパタパタさせたり、耳を広げたりしながらゴロゴロという音を出しつつ、それほど意図的でないように見える身体の動き(例えば、尾を立てたり、左右に振ったりする動き)を示した。最も一般的な挨拶の形は、耳をパタパタさせながらゴロゴロという音を立てることだったが、これは雄同士よりも雌同士の場合に多く見られた。著者らはまた、挨拶行動の71%で排尿、排便、側頭腺(ゾウ特有の汗腺)からの分泌といった嗅覚行動があったという観察結果を示した。このことは、挨拶の際に匂いが重要な役割を果たしている可能性を示唆している。

また、著者らは、挨拶の際にゾウが用いるコミュニケーションの方法が、挨拶の相手が自分を見ているかどうかによって異なることを観察した。ゾウは、相手のゾウが自分を見ている時には、視覚的なジェスチャー(例えば、耳を広げる、鼻を長く伸ばす、鼻を左右に振る)を使う傾向があったが、相手が自分を見ていない時には、音の出るジェスチャー(例えば、耳をパタパタさせる、耳で首をピシャリとたたく)を使ったり、鼻で挨拶の相手の身体に触れたりすることが多くなる傾向があった。

以上の観察結果を総合すると、ゾウ同士が発声とジェスチャーを組み合わせて挨拶をしていること、そして、挨拶する相手の視覚的注意が自分に向けられているかどうかによって、コミュニケーションの方法を意図的に変えている可能性があることが示唆された。これまでの研究で、チンパンジーなどの類人猿も、発声とジェスチャーを組み合わせて用いており、相手が自分を見ているかどうかに応じてコミュニケーションの方法を変えることが報告されている。著者らは、これらのコミュニケーションの方法が、進化系統上は離れた関係にある動物種において独立して進化して、社会的相互作用を仲介した可能性があるという見方を示している。

doi:10.1038/s42003-024-06133-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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