心理学:心に思い浮かべた言葉をリアルタイムで解読する
Nature Human Behaviour
2024年5月14日
内部発話(身体を動かしたり音を発したりせずに、心の中で言葉を思い浮かべること)の際に脳信号から意味を抽出することができる新たな技術について報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見は予備的なものだが、この研究は、話す能力を失った人々のコミュニケーションを回復するのを助けるツールの開発に役立つ可能性がある。
病気や怪我のために、一部の神経学的状態は人の話す能力を奪ってしまうが、脳–マシンインターフェース(BMI)は患者を再び会話可能にする可能性を秘めている。発話解読装置として知られるBMIは、内部発話の脳活動を捉え、それを言語の単位へと変換することができる。しかし、最近の進歩にもかかわらず、観察可能な出力が存在しないことに加え、思考と会話における脳活動に差があることから、内部発話の解読は困難なものとなっている。
今回、Sarah Wandeltらは、脳内の特定領域(縁上回と一次体性感覚皮質)に微小電極アレイが埋め込まれた2人の四肢麻痺患者の脳活動を記録した。聴覚的なきっかけ(話し言葉)または視覚的なきっかけ(書かれた言葉)を与えられた患者は、まず、単語(例えば、「スプーン」や「ニシキヘビ」や「戦場」)を心の中に思い浮かべ、少し間をおいた後に、その単語を口に出すよう求められた。Wandeltらは実験中、リアルタイムで、「心の中で話された単語」と「発声された単語」の両方を、縁上回上の電極を介して、2人の被験者のそれぞれについて79%と23%の精度で解読することができた。また1人の被験者については、内部発話、単語の理解、発声された音声の間で神経表現が共通することを示す証拠が得られた。
Wandeltらは、この技術の機能性を高めるためには、より多くの参加者を対象に、また新たな単語を用いて検証することによるさらなる研究が必要だが、多目的BMIの実現には、縁上回が有望な部位であるとは推奨している。
doi:10.1038/s41562-024-01867-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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