古生物学:羽毛恐竜における鱗から羽毛への移行を調べる
Nature Communications
2024年5月22日
羽毛恐竜のプシッタコサウルス(Psittacosaurus)の皮膚に爬虫類の鱗のような部分があったことを明らかにした論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、爬虫類と鳥類の皮膚の進化に関する理解を深めるために役立つ可能性がある。
羽毛は、羽毛の成長、飛行、体熱調節を容易にするための複雑な皮膚の適応に関連しており、そのために羽毛の生えた皮膚は爬虫類の鱗状の皮膚とは異なったものになっている。しかし、初期の羽毛動物で鱗状の皮膚が羽毛の生えた皮膚にどのように移行したかについての詳細は明らかになっていない。
今回、Zixiao Yangらは、中国の前期白亜紀の熱河生物相から出土したプシッタコサウルスの化石試料を用いて皮膚の進化を調べた。プシッタコサウルスは、約1億3000万年前に生息していた羽毛恐竜で、尾だけに羽毛が生えている。今回の研究では、紫外光照射による蛍光と電子顕微鏡を用いて皮膚細胞の構造を調べることができた。
これらの化石試料には2層の皮膚が存在することが示され、これは現生爬虫類の表皮層と角質細胞層に酷似しており、現存する鳥類の皮膚とは異なっていた。また、メラノソーム(皮膚色素の残渣)が保存されていることも明らかになった。これは、現生爬虫類の鱗と矛盾しない色パターンの領域が存在していることを示している可能性がある。以上の知見は、プシッタコサウルスの体の羽毛のない部分には祖先の爬虫類の鱗状の皮膚が残っており、現生鳥類の皮膚の特徴は体の羽毛のある部分にのみ存在していたとする仮説を裏付けている。
Yangらは、こうした爬虫類の皮膚が羽毛の進化の初期段階に保持されていたことで皮膚機能が保護されていた可能性があり、羽毛の進化における重要な適応移行を示している可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-024-48400-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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