健康:1回の投与で長期的にマウスの喘息を抑制する治療法
Nature Immunology
2024年5月28日
アレルギー反応のドライバーを標的とするよう設計されたキメラ抗原受容体(CAR) T細胞の単回投与によって、マウスのアレルギー性喘息の兆候と症状が少なくとも1年間抑制されることを明らかにした論文が、Nature Immunologyに掲載される。この知見によって、アレルギー性喘息の長期寛解を誘導できる治療法の開発に道が開けるかもしれない。
喘息は最も患者の多い呼吸器疾患の1つで、患者は全世界で3億人に上り、毎年およそ25万人が死亡する。CAR T細胞療法はがんなどの疾患の治療に広く用いられており、慢性喘息の治療法としても期待されているが、これまで検証されていなかった。
今回、Min Pengらは、喘息治療用のCAR T細胞を設計し、アレルギー性喘息のマウスモデルに単回投与して検証した。そして、このマウスの肺で、アレルギー反応と炎症の兆候をモニターした。その結果、CAR T細胞が白血球を中和して喘息の症状に関わるタンパク質の機能を阻害し、肺の炎症を抑えて喘息の症状を軽減することが明らかになった。さらに、これらのCAR T細胞は少なくとも1年間持続し、アレルギー性免疫応答を防ぎ続けることも分かった。
Pengらは、これらのCAR T細胞がヒトのアレルギー性喘息患者に投与しても安全で有効かどうかは、今後、臨床試験を行って検証するべきだと述べ、この治療の応用が他のアレルギー疾患の治療にも役立つ可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41590-024-01834-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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