健康:国際的な汚染がヨーロッパでのオゾン関連死の大半に関係している
Nature Medicine
2024年6月4日
ヨーロッパ大陸でのオゾンに起因する死者の大半に、ヨーロッパ以外の地域から国を越えて移動するオゾン大気汚染が関係していることが、モデル化研究により示された。このことを報告する論文が、Nature Medicineに掲載される。この知見から、大気汚染問題に取り組むには、より広範な国際協調が必要なことが示唆される。
地表のオゾンは、前駆体となる気体(酸化窒素類など)と日光の相互作用によって大気中で形成される大気汚染物質で、一部の地域では、気候変動の影響でオゾン濃度が上昇する可能性がある。オゾン大気汚染は、心血管疾患や呼吸器疾患をはじめ、健康に悪影響を及ぼすが、健康への有害な負荷をもたらすオゾンの地理的な発生源について、大陸レベルでの定量化は行われていない。
今回、Hicham Achebakらは、空気質と疫学のモデル化を用いて、さまざまな地理的発生源からのオゾン汚染がもたらすヨーロッパの死亡数負荷を定量化した。このような死亡数負荷には、2015~2017年の暖候期におけるヨーロッパ35カ国の813の地域における600万人を超える死亡が含まれる。解析の結果、オゾンに起因する死亡の88%には、国境を越えて持ち込まれたオゾン大気汚染が関連しており、国内発生源を原因とするものはわずか12%であることが分かった。国際的なオゾンを原因とする死亡の比率は、イタリアの83%からリヒテンシュタインの100%まで幅がある。ヨーロッパ以外から持ち込まれたオゾンが関連するのはオゾン関連死の57%に上り、これに対してヨーロッパ内の他国からのオゾンが関連するのは21%、ヨーロッパに近い海域から持ち込まれた海洋性オゾンが関連するのは7%だった。ただし、これは生態学的モデル化研究であるため、これらの知見から因果関係の推論はできない。また、この研究はオゾン汚染が死亡数に及ぼす短期的な影響だけを考察したものであり、この研究から健康に与える長期的な影響に関する結論を引き出すことはできない。
Achebakらは、これらの知見は、現在の空気質指針を評価する上で意味がある可能性があると述べ、現在の指針は国家レベルや地域レベルでしか設定されていないが、国家間で協調した空気質の管理政策が求められるとしている。
doi:10.1038/s41591-024-02976-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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