考古学:ネアンデルタール人の複数の炉跡の年代的間隔を測定する新しい方法
Nature
2024年6月6日
スペインで発見されたネアンデルタール人の6つの炉跡の年代的間隔の最小値に関する研究について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。今回の研究では、6つの炉床が少なくとも200~240年の間に形成され、個々の炉床に数十年の時間的隔たりがあったことが示唆された。この知見は、ネアンデルタール人の行動の解釈に役立つかもしれない。
旧石器時代の人間活動の時間スケールを決定することは難しい。これは、年代測定技術の分解能に限界があるためで、放射性炭素年代測定法は、測定限界を約5万~6万年前まで延ばして適用されており、それ以外の年代測定法では数千年の誤差が生じる可能性がある。炉跡は、人間活動の適切なマーカーとなり得る。火を起こすことは特定の場所を占有していたことを示す指標となるためで、これが、今回のÁngela Herrejón-Lagunillaらの研究で示された研究方法の中核となっている。
スペインのエルソルトの一連の炉跡(6カ所)は、ネアンデルタール人の研究にとって重要な遺跡であり、約5万2000年前(中期旧石器時代)のものと年代決定され、約200~240年の間に形成されたと推定される同じ堆積層内で発見された。それぞれの炉跡の年代的間隔は、短いもので数十年、長いもので最長100年と推定されている。今回Herrejón-Lagunillaらは、考古層序分析(炉跡間の相対年代が分かる)と考古磁気法(炉跡に残された物質には最後に火を起こしたときの地球の磁場の記録が保持されているという仮説に基づいている)を併用した。その結果、移動生活をしていたネアンデルタール人が一生のうちに以前の居住地に舞い戻る場合があったが、常にそうだったわけではないことを示す知見が得られた。
Herrejón-Lagunillaらは、以上の分析は、旧石器時代の狩猟採集民の行動を理解するための今後の研究に寄与する可能性があるという考えを示している。Herrejón-Lagunillaらはまた、今回の研究で用いた方法は、他の考古学的状況に適用して、人類の活動の時期を解明できる可能性があると付言している。
doi:10.1038/s41586-024-07467-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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