動物学:アフリカゾウは名前のような呼び方で互いを呼び合う
Nature Ecology & Evolution
2024年6月11日
野生のアフリカゾウ(Loxodonta africana)はヒトが使う個人の名前のような呼び方で互いを呼び合っているとみられ、これは呼び掛ける相手が発する音声を真似たものではなさそうであることを示した新たな論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。
イルカやオウムのような非ヒト動物種は、呼び掛ける相手が発する音声を真似て互いに呼び合うことが観察されているが、名前を使って互いに呼び合うことが知られているのはヒトだけである。
今回、Michael Pardoらは、1986~2022年にケニアのアンボセリ国立公園、サンブル国立保護区、およびバッファロー・スプリングス国立保護区において、野生のアフリカゾウの雌と仔の群れで発せられた「ランブル」と呼ばれる長い重低音の呼び声の録音469件を、機械学習法を用いて解析した。機械学習モデルは、これらの呼び声の27.5%の受け手を正しく特定しており、Pardoらによれば、これはモデルに対照音声を供給した場合に受け手が検出される割合を上回っていたという。Pardoらは、ゾウは呼び掛ける相手が発する音声の模倣によらない、個体特有の呼び方を使って、互いに呼び合っている可能性があると示唆している。
Pardoらはまた、17頭の野生のゾウについて、もともと自分に向けて発せられた呼び声か他個体に向けて発せられた呼び声のいずれかの録音に対する反応を比較した。その結果、ゾウは、もともと自分に向けて発せられた呼び声の録音が再生されると、他個体に向けて発せられた呼び声の場合と比べて、より俊敏にスピーカーへと接近し、音声による応答も多いことが明らかになった。このことは、ゾウが自分に向けて発せられる個体別の呼び方を認識していることを示唆している。
Pardoらは、ゾウが名前のような呼び方を使う状況を調べるためには、さらなる研究が必要であることを示唆するとともに、それが分かれば、ヒトとゾウの両種におけるこうした呼び方の起源を明らかにするのに役立つのではないかという考えを示している。
doi:10.1038/s41559-024-02420-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
気候変動:世界的な観光産業による二酸化炭素排出量は増加し、不平等であるNature Communications
-
加齢:脳の老化に関連する重要なタンパク質の発見Nature Aging
-
量子コンピューティング:新しいチップで量子エラー訂正が改善Nature
-
Nature's 10:2024年の科学に影響を与えた10人Nature
-
気候:GenCastは既存の気象予報を凌駕するNature
-
工学:鳥にヒントを得た脚がロボットの飛び立ちを助けるNature