医学:血中のタンパク質がパーキンソン病の予測に役立つかもしれない
Nature Communications
2024年6月19日
血液に含まれる特定の複数のタンパクは、パーキンソン病の運動症状が発現する最大7年前からパーキンソン病の発症を予測するのに役立つ可能性があるという知見を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
パーキンソン病は、動作の緩慢、筋強剛、静止時振戦などを症状とする神経変性疾患である。運動症状が発現する前に、レム睡眠行動障害などの睡眠障害を含む非運動症状の期間があり、これが、将来的にパーキンソン病を発症することを予測する上で重要な因子となる。レム睡眠行動障害の患者を研究することは、パーキンソン病の発症前に起こる初期の病理学的事象を洞察するための手掛かりを得る機会をもたらす。
今回、Jenny Hällqvistらは、最近パーキンソン病と診断された患者(99人)、パーキンソン病に関連する運動症状のないレム睡眠行動障害患者(72人)、健常対照者(36人)の血液試料を分析した。その結果、炎症、凝固カスケード、Wntシグナル伝達の経路に関係する23種の血中タンパク質がいずれも、パーキンソン病患者では調節不全に陥っていることが判明した。このうちの6種のタンパク質は、レム睡眠行動障害患者でも調節不全に陥っていた。次にHällqvistらは、機械学習モデルを適用し、血中タンパク質の組成に基づいて、パーキンソン病診断を予測した。この機械学習モデルは、8種のタンパク質の発現に基づいて、パーキンソン病患者を100%の精度で特定することができた。Hällqvistらはまた、レム睡眠行動障害患者がパーキンソン病を発症するかどうかをこの機械学習モデルによって予測できるか検証した。その結果、このモデルを用いると、パーキンソン病を発症する患者を、運動症状が発現する最大7年前から、79%の精度で予測可能であることが分かった。
Hällqvistらは、初期段階のパーキンソン病患者を特定できれば、予防薬の臨床試験への参加者を増やし、患者の治療選択肢と研究成果の両方を改善できる可能性があると指摘する一方で、これらの知見を臨床現場に反映させる前に、より大規模なコホートにおいてさらなる検証を行う必要があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-024-48961-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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