気候変動:加速するジュノー氷原の氷河減少
Nature Communications
2024年7月3日
2005年以降、アラスカのジュノー氷原における氷減少の速度が、過去250年間と比べて加速していることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。2015~2019年の氷河面積の縮小速度が、1979~1990年の5倍に達していたことが明らかになった。著者らは、この傾向が続けば、氷河の後退が回復可能な転換点を超える可能性があるという見方を示している。
氷河や氷原では、気候に起因した氷の減少が起こっており、これが海水準上昇の一因であることが示されている。そして、アラスカは、2100年までの間、この影響をもたらす最大の地域的要因であり続けると予想されている。アラスカの氷河は頭でっかちな(標高が高いほど面積が大きい)ものが多く、台地上に位置しているため、気候の変化に対して特に脆弱だ。また、アラスカの氷河は、これらの要因のために、閾値挙動を示しやすくなっており、そのため、転換点を超えると不可逆的な氷河後退が起こる可能性がある。気候変動がアラスカの氷河にどのような影響を与えるかを理解するためには、アラスカの氷河の変化に関して、もっと長期的な記録が必要になる。
今回、Bethan Daviesらは、歴史記録、航空写真、3D地形図や衛星画像を用いて、過去250年間のジュノー氷原の氷河の挙動を再構築した。その結果、1770~1979年には、氷河の体積が、年間約0.65立方キロメートルという一定の速度で減少していたことが確認された。この速度は、1970~2010年には年間約3立方キロメートルに加速し、2010~2020年には年間5.9立方キロメートルとほぼ倍増した。このように氷河体積の減少が加速した2010~2020年には、氷河の薄化速度が1979~2000年の1.9倍に達し、氷原の分断が増加していた。Daviesらは、このように氷原の涵養域が縮小していることが、1つの正のフィードバックループ(濃い色の岩が露出して、太陽光反射率が低下し、氷河の後退をさらに助長する)に寄与しているという見解を示している。
今回の知見は、ジュノー氷原が氷河後退の不可逆的な転換点に向かっていることに、1つの物理機構が寄与している可能性を示唆している。Daviesらは、アラスカの氷河の氷を減少させる機構に対する理解が深まれば、近い将来の海水準上昇予測を改善できる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-024-49269-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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