ウイルス学:牛H5N1インフルエンザの感染と伝播
Nature
2024年7月9日
米国で牛に蔓延しているH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスの特性解析により、哺乳類における感染と伝播の特徴が明らかになった。このウイルスは、牛インフルエンザに感染した牛の乳汁を介してマウスに感染し、また、鼻腔内暴露することでマウスとフェレットに感染し、感染した動物の乳腺に移動することが示された。今回の研究結果は、Natureに掲載される。
2024年春に米国の酪農場で検出された牛インフルエンザが、牛における高病原性H5N1鳥インフルエンザの感染が発生した最初の記録である。その後、ウイルスの拡散は、牛群にわたって記録され、ヒトを含む他の哺乳類でも感染が確認されており、公衆衛生上のリスクが高まっていることを示している。牛間での感染には、乳腺感染と汚染された搾乳器具が関与していると推測されており、感染牛の乳汁からもウイルスが検出されているが、牛H5N1の基本的な特徴は不明である。
河岡 義裕(かわおか よしひろ)らは、米国ニューメキシコ州の感染乳牛の乳から分離されたH5N1ウイルスの特徴を明らかにした。著者らは、マウスとフェレット(哺乳類におけるインフルエンザの研究に用いられる2つの一般的な動物モデル)において、このウイルスがどのように複製し、病気を引き起こすかを試験した。ウイルスは、両動物の乳腺を含む全身に広がることが示された。また、著者らは、牛では検出されていない古いバージョンの鳥H5N1インフルエンザウイルスでも同様に広がることを示し、これらの鳥類ウイルスによる哺乳類感染において、乳腺感染がこれまで見過ごされてきた特徴である可能性を示した。さらに、感染した泌乳マウスからその仔マウスへのウイルスの伝播が観察された。著者らは、フェレットの呼吸器飛沫から感染が起こるかどうかを試験し、この経路による感染は限定的であることを報告した。
さらに、著者らはレセプター結合について調べ、牛H5N1が鳥類型およびヒト型シアル酸レセプターの両方に結合することを発見した。このような二重のレセプター結合特異性は、これまで循環している古いH5N1ウイルスでは観察されていない。
doi:10.1038/s41586-024-07766-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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