古代ゲノミクス:疫病に襲われた新石器時代の農民たち
Nature
2024年7月11日
繰り返されるペストの発生が、新石器時代のスカンジナビアにおける人口減少の一因となった可能性を示唆する論文が、Natureに掲載される。100人以上から採取された古代のDNAを分析した結果、これらの農民の運命に光を当てるとともに、彼らの親密な家族生活についても明らかになった。
現在より較正年で約5,300年から4,900年前の間に、ヨーロッパの多くの地域で新石器時代の人口が崩壊した。これは、新石器時代の衰退として知られている。ペストを含む様々な説が提唱されているが、初期の発生が広範囲に及ぶ伝染病を引き起こしたのか、それとも小規模の孤立した出来事によるものだったのかは明らかになっていない。
Frederik Valeur Seersholm、Martin Sikoraらは、スウェーデンにある8つの巨石墓、およびデンマークにある1つの石棺から、6世代にわたるスカンジナビアの新石器時代の108人の古代のDNAを分析した。ペストを媒介する細菌Yersinia pestisは広範囲に存在し、塩基配列を決定した全個人の少なくとも17%から検出された。この分析によると、約120年の間にペストは少なくとも3つの異なる波から地域社会に広がったことを示唆している。最初の2つの波は、小規模で収束していたが、3つ目の波はより広範囲に広がった。また、初期のペスト株は、Yersinia pestisにはこれまで見られなかった病原因子を含んでおり、致死的になる可能性があった。これらの証拠を総合すると、この初期に生じたペストが、広範囲に蔓延した伝染病の引き金となった可能性があり、繰り返し発生した伝染病が、新石器時代の衰退に重要な役割を果たしたことを示唆している。
さらに、この研究はスカンジナビアにおける新石器時代の家族生活に関する洞察を与えている。複数のパートナーを持つ男性が4人確認されたが、複数のパートナーを持つ女性の例はなかった。このことは、社会構造が父系的であったことを示唆している。また、1人の女性が2人の兄弟とは別の墓に埋葬されていたことから、女性は家族を築くために近隣の集団に移動することもあったようである。
Seersholm, F.V., Sjögren, KG., Koelman, J. et al. Repeated plague infections across six generations of Neolithic Farmers. Nature (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07651-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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