惑星科学:月の地下に探索できそうな洞窟の通路を発見
Nature Astronomy
2024年7月16日
月面の開いているピット(縦孔)から、探索できそうな地下洞窟の通路が生じている証拠を報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。この発見は、月の地質学と、将来の月面への有人ミッションにおけるシェルターとしての役割に関する洞察を提供するものである。
月の表面には、200以上の縦孔が見つかっており、そのうちのいくつかは「スカイライト(天窓)」と呼ばれ、その下にある溶岩チューブの崩落によって形成されている。利用できる溶岩チューブや通路は、地表よりも温暖な環境を提供する可能性がある。しかし、それらが地下に大きな容積を持つ洞窟への到達を可能にするかどうかは不明である。
Leonardo Carrer、Lorenzo Bruzzoneらは、Lunar Reconnaissance Orbiter(LRO;ルナー・リコネサンス・オービター〔米国の月探査機〕)のレーダーのデータを用いて、Mare Tranquillitatis Pit(静かの海の縦孔)を分析した。この縦孔は、月で最も深い縦孔として知られており、半径は約100メートル、そして、垂直または張り出した壁と傾斜した床を持っている。著者らは、縦孔の西側でレーダーの輝度が増加していることを観測した。レーダー画像に基づくシミュレーションにより、これらの観測結果は、縦孔の底の西側から広がる洞窟の空洞、あるいは、通路の存在によって説明できると結論づけた。科学者たちは、通路は深さ130–170メートルに位置し、長さ30–80メートル、幅45メートル程度と推定している。また、洞窟は平坦、あるいは最大45度傾斜しており、到達できる可能性が高い。
著者らは、火山チューブや通路は、月の平原の下によく見られる特徴であり、Mare Tranquillitatis Pitとその通路は、月面基地の候補地として有望かもしれないことを示唆している。また、今回紹介した方法は、月にある他の縦孔を評価し、その特徴を明らかにすることで、さらなる通路を特定するための実行可能な選択肢となりうる。
Carrer, L., Pozzobon, R., Sauro, F. et al. Radar evidence of an accessible cave conduit on the Moon below the Mare Tranquillitatis pit. Nat Astron (2024).
doi:10.1038/s41550-024-02302-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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