気候変動:グレートバリアリーフの記録的な気温
Nature
2024年8月8日
オーストラリアのグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)とその周辺の過去10年間の水温は、過去400年間で最も高かったことを報告する論文が、Natureに掲載される。このような温暖化の時期は、サンゴの大量白化や死滅のリスクを高め、人為的な気候変動が原因である可能性が高い。
多様な生態系ネットワークが存在するグレートバリアリーフは、1980年代に初めて白化現象が記録されて以来、近年、白化現象が頻発している。サンゴの大量白化は、地球温暖化に伴う水温の上昇によって引き起こされる可能性がある。グレートバリアリーフを含む珊瑚海(Coral Sea)における海面水温の解析は、これまで主に最近の計器による観測に限られていた。
Benjamin Henleyらは、珊瑚海内とその周辺から採取したサンゴの骨格サンプルを用いて、1618年から1995年までの海面水温データを再構築し、このデータセットと1900年から2024年までの海面水温記録データと組み合わせた。その結果、1900年以前の海面水温は比較的安定していることが判明した。しかし、1960年から2024年にかけては、1月から3月の年間平均気温が10年当たり0.12°C上昇していることが確認された。Henleyらは、2016年、2017年、2020年、2022年、および2024年のサンゴ大量白化の年の1月と3月の平均海面水温は、1900年以前の再構築したデータのどの年よりもはるかに高く、この地域が過去四世紀間に経験した最も暖かい6つの年のうちの5つであると指摘している。さらに、モデリングを進めると、1900年以降の温暖化は人為的な影響によるものであると示唆されている。
著者らは、海水温のモデル化に使用されるサンゴの化学的割合の一部が、塩分濃度などの他の変数の影響を受けているため、海水温の再構築データには不確実性が残っていると指摘している。しかし、これらの不確実性は、この地域のサンゴコアのサンプリングを追加することで減らすことができる。Henleyらは、地球温暖化がパリ協定の目標である産業革命前より1.5°C上昇する水準に抑えられたとしても、世界中のサンゴの70%から90%が失われる可能性があり、将来のサンゴ礁はサンゴの種の多様性が減少し、異なる群集構造になる可能性が高いことを示している。
Henley, B.J., McGregor, H.V., King, A.D. et al. Highest ocean heat in four centuries places Great Barrier Reef in danger. Nature 632, 320–326 (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07672-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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