考古学:ストーンヘンジの祭壇石はスコットランドを起源としているかもしれない
Nature
2024年8月15日
ストーンヘンジの祭壇石(アルターストーン)は、スコットランド北東部から出土した可能性があることを示唆する分析結果を報告する論文が、Nature に掲載される。この発見は、先史時代のイギリスの文化とつながりについてさらなる洞察を与え、高度な社会組織を示唆している。
イングランド南西部にある新石器時代のストーンヘンジ遺跡のこれまでの分析から、ストーンサークルの建設に使われた石材は主に2種類であることが判明している。サーセン石はマールボロ近くのウエスト・ウッズ(約25キロメートル離れている)から供給され、また、ウェールズが起源のものを含むブルーストーンが使用されている。祭壇石は、ブルーストーン巨石の中で最も大きなもので、その起源は不明だが、これまでの研究ではアングロ・ウェールズを起源とする説は否定されている。
Anthony Clarkeらは、祭壇石の2つの破片から採取したジルコン、アパタイト、ルチルの粒子の年代と化学組成を分析した。破片のジルコンの大部分は、中原生代(Mesoproterozoic;約16億-10億年前)と太古代(Archaean;約40億-25億年前)に由来するものであったが、アパタイトとルチルの大部分は中期オルドビス紀(mid-Ordovician;4億7,000万-4億5,800万年前)に由来するものであった。さらに、イギリスとアイルランドの堆積物と年代を比較したところ、スコットランド北東部のオルカディアン盆地(Orcadian Basin)の旧赤色砂岩(Old Red Sandstone)との著しい類似性が見られ、祭壇石の起源である可能性があると著者らは提案している。このことは、祭壇石が最終的に配置された場所から750キロメートルほど離れた場所で産出されたことを示唆している。著者らは、当時の地形やイギリスの森林地帯の性質から、陸上輸送は困難であっただろうと指摘している。また、著者らは、石はスコットランド北東部からいイギリス南部へ海路で運ばれた可能性があると提案している。
これらの発見は、新石器時代のイギリスにおいて、長距離輸送を可能にする高度な社会組織が存在したことを示唆している、と著者らは結論づけている。
Clarke, A.J.I., Kirkland, C.L., Bevins, R.E. et al. A Scottish provenance for the Altar Stone of Stonehenge. Nature 632, 570–575 (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07652-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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