気候変動:2023年のカナダで記録的な山火事シーズンを引き起こした要因
Nature Communications
2024年8月21日
2023年のカナダの山火事シーズンは、記録上、同地域で最も規模と強度が深刻なものの一つであり、その要因と影響を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の調査結果は、カナダにおける火災の気象条件がますます深刻化していること、そして山火事への継続的な備えの重要性を浮き彫りにしている。
人為的な気候変動により、世界の多くの地域で極端な火災の気象条件が発生する可能性が高まっていると考えられている。2023年のカナダの山火事シーズンでは、1,500万ヘクタール近くの土地が焼失し、これは1972年に全国的な報告が開始されて以来、最大規模となる。山火事は広範囲にわたって影響を及ぼし、約23万2,000人が避難を余儀なくされた。火災による煙は、近隣のコミュニティーだけでなく、カナダ南部や米国東海岸など、山火事現場から1,000キロメートル以上離れた人口が多い地域にも影響を与えた。
Piyush Jainらは、複数のデータセットを使用して、2023年のカナダの山火事の特徴、主な要因、影響の概要をまとめて、過去の山火事と比較した。著者らは、2023年の5月から10月の平均気温が1991年から2020年の平均よりも2.2°C高かったこと、早期の雪解け、シーズン初期の干ばつ状態、および猛暑など、いくつかの要因が重なり、このような異常な山火事が発生したと提案している。こうした状況により、火災気象指数(Fire Weather Index)によると、火災の危険性が高い日数が増加したと考えられ、2023年にこうした極端な状況に陥った森林地域の割合は、1940年以降で最高となった。この増加と観測された山火事の持続時間および規模の拡大との間には強い相関関係がみられた。また、同時多発的な山火事により、全国的に火災の管理および対応能力が限界に達した。
今回の調査結果は、カナダにおける山火事がもたらす、ますます深刻化する課題を浮き彫りにしている。これらの課題が人為的な気候変動の影響によって悪化し、極端な火災気象の増加によってもたらされている、と著者らは結論づけている。
Jain, P., Barber, Q.E., Taylor, S.W. et al. Drivers and Impacts of the Record-Breaking 2023 Wildfire Season in Canada. Nat Commun 15, 6764 (2024).
doi:10.1038/s41467-024-51154-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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