気候変動:沿岸都市は気候変動への適応が遅い
Nature Cities
2024年8月27日
世界中の沿岸都市は、気候変動の影響に適応するのが遅く、未来のリスク予測よりも過去と現在の経験に頼っていることを明らかにする体系的レビューが、Nature Citiesに掲載される。
世界中の沿岸都市は、経済成長のホットスポットである一方、海面や海面の水温の上昇、嵐や洪水などの災害の影響を受けやすい場所でもあり、これらの災害はすべて、気候変動によって増加している。しかし、気候変動の影響やそれを緩和する技術は、都市の立地や社会経済的な特性によって異なる。
Matthias Garschagenらは、世界中の199の沿岸都市を対象とした183の研究を分析し、気候変動への適応策を調査した。その結果、都市の適応策は、主に過去および現在の出来事を基にして開発されており、気候リスクおよび都市の成長や貧困などといった、そのほかの傾向に関する未来のシナリオが考慮されていないことで、都市がさらされるリスクと脆弱性を高める可能性を発見した。著者らは、レビュー対象の都市が主に海面上昇、洪水、高潮、サイクロン、および海岸浸食の脅威に対処していることを明らかにした。また、著者らは、高所得国の都市政府は、大規模な堤防や都市計画の調整などのインフラや制度的な対応を実施する傾向が強いが、低中所得国では、洪水対策として個々の住宅を高床式にする、近隣の支援を促進するなど、家庭レベルの行動的適応に頼る傾向が強いことを指摘している。さらに、Garschagenらは、低中所得国の沿岸都市の適応策や、特定のタイプの適応戦略(生態系に基づく適応策など)に関する情報がほとんど公開されていないことを強調している。
著者らは、特に資源が乏しい国々において、どのような気候適応計画が将来的に有効であるか、また、最も危険にさらされている沿岸都市の適応策をどのように加速し、より効果的にできるかを評価するためのさらなる研究が必要であると結論づけている。
Wannewitz, M., Ajibade, I., Mach, K.J. et al. Progress and gaps in climate change adaptation in coastal cities across the globe. Nat Cities (2024). https://doi.org/10.1038/s44284-024-00106-9
doi:10.1038/s44284-024-00106-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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