動物学:偶然に発見されたハエに寄生する新種のハチ
Nature
2024年9月12日
幼虫ではなく成虫のハエを攻撃し、その体内に産卵する新種のハチが発見されたことを報告する論文が、今週発行のNatureに掲載される。ショウジョウバエは科学研究の重要なモデル生物であるにもかかわらず、寄生バチがショウジョウバエの成虫を宿主とするのは今回が初めてである。この発見は、研究者らの地元の裏庭で捕獲されたハエのスクリーニング中に偶然なされたもので、研究が進んでいる生物にも未記載の生物学が存在しうることを示しており、継続的な昆虫研究の価値を実証している。
寄生生物は、宿主生物の成長に依存しており、生きている生物に卵を産み付ける。通常、成虫が羽化すると宿主は死にいたる。現在までに、ショウジョウバエ(Drosophila)を標的とする約200種の寄生バチが発見されているが、いずれも幼虫やさなぎなど、無防備な段階にある個体を標的としていることが分かっている。これまで、ショウジョウバエの成虫期に寄生し、そこで成長するハチは発見されていない。
Logan Mooreらは、ショウジョウバエの成虫期に感染する新しいハチの一種を発見したと報告している。2023年3月、米国ミシシッピ州の裏庭で野生のショウジョウバエの線虫感染をモニタリングしていたところ、著者らはショウジョウバエの一種、Drosophila affinisの雄成虫の腹部内に寄生バチの幼虫を発見した。著者らは、この寄生バチを、Syntretus perlmaniという新種と特定し、特にショウジョウバエに感染するわけではないものの、成虫の昆虫を感染させることで知られる寄生バチの亜科の一種であるEuphorinaeに属することを確認した。Syntretus種は北米で生息していることが知られているが、その宿主に関する情報は不明であった。
この偶然の発見により、著者らはこの新しい寄生バチの生活史を研究することができるようになり、寄生虫と宿主の相互作用に関する今後の研究に役立つ可能性がある。
Moore, L.D., Chris Amuwa, T., Shaw, S.R. et al. Drosophila are hosts to the first described parasitoid wasp of adult flies. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07919-7
doi:10.1038/s41586-024-07919-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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