気候変動:永久凍土の融解が北極圏の山火事に与える影響
Nature Communications
2024年9月25日
気候変動によって永久凍土の急速な融解が予測されると、北極圏や亜北極地域で山火事が増加する可能性があることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。永久凍土地域での森林火災の急激な増加は、陸域による正味炭素吸収量の変化につながるかもしれない。
北極圏や亜北極地域の炭素を多く含む土壌での山火事は、比較的温暖で乾燥した夏の時期によく発生する。永久凍土(永久に凍ったままの土壌)は、地球の温暖化により融解が進んでおり、これは土壌の水分レベルの変化を招き、山火事の発生確率に影響を与える可能性がある。しかし、この変化の潜在的な影響は、包括的な気候モデルにおいてまだ十分に把握されていない。
In-Won Kimらは、Community Earth System Model 2(CESM;地球の気候システムのシミュレーションに使用される気候モデル)を用いて、永久凍土の融解がもたらす影響を研究することにした。1850年から2100年までの期間について、過去と将来の排出シナリオの両方で、永久凍土の融解と山火事の急激な変化を50の気候シミュレーションで分析した。
このモデルでは、シベリアやカナダなどの地域では、21世紀半ばから後半にかけて、永久凍土の活性層の厚さが顕著に増加し、土壌の氷の含有量が過去の期間と比べて減少すると予測している。将来の気候シナリオにおける気温の上昇は、土壌水分の急激な減少とも関連している。これは、土壌の融解が進むと、水分が下方に浸透し、地表から遠ざかる可能性があるためである。このような土壌水分の急激な減少は、地表面気温の上昇と相対湿度の低下と関連し、気温上昇の影響をさらに悪化させる。また、このような土壌水分の変化は、21世紀末までに西シベリアやカナダなどの高緯度地域で予測される山火事の激化と関連している可能性がある、と著者らは示唆している。
この研究は、永久凍土の融解や土壌組成など、人為的な気候変動の影響を受ける複雑な環境相互作用を考慮したモデリング技術の改良の重要性を明らかにしている。
Kim, IW., Timmermann, A., Kim, JE. et al. Abrupt increase in Arctic-Subarctic wildfires caused by future permafrost thaw. Nat Commun 15, 7868 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-51471-x
doi:10.1038/s41467-024-51471-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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