神経科学:ショウジョウバエの脳の完全な地図
Nature
2024年10月3日
約140,000のニューロンと5,000万以上の接続を含む、ショウジョウバエの脳全体の最初の配線図が、今週のNatureに掲載される。この地図は、FlyWireコンソーシアムによる論文コレクションの一部である。この研究により、脳の機能について、これまでよりも詳細に研究する機会が提供され、他の種の脳のマッピングへの道が開かれる。
さまざまな高度な行動の基盤となる脳機能は、ニューロンの活動とそれらの脳細胞間の接続によって駆動される。これらの接続をマッピングすることで、脳の働きに関する洞察が得られる。キイロショウジョウバエ(学名:Drosophila melanogaster)は、生物医学研究で一般的に使用されるモデル生物であり、神経回路の完全な配線図を作成するための理想的な出発点である。ショウジョウバエの脳には、人間の脳の100万分の1程度のニューロンしか存在しないが、飛翔やナビゲーションから社会的相互作用まで、さまざまな複雑な行動を示す。これまでは、ショウジョウバエの一部の地図は作成されていたが、脳全体の完全な地図は存在していなかった。
ショウジョウバエの脳の完全な配線図、すなわちコネクトームの最初の完全版は、Sebastian SeungおよびMala Murthyらによって発表された。これまでに発表された最大のショウジョウバエの結合地図は「半脳」から導き出されたもので、約20,000のニューロンが約1,400万のシナプスでつながっている。FlyWireコンソーシアムによる新しい地図では、ニューロン数は約7倍(139,255)に、そしてシナプス数は約4倍(5,450万)に増加している。コネクトームを理解するために、Davi BockおよびGregory Jefferisらの研究チームは、神経細胞の種類、細胞の種類、機能グループの注釈を2つ目の論文で提供している。著者らは、8,400以上の細胞の種類を特定し、そのうち4,581は新しいもの(ほとんどが以前研究された半脳以外の脳領域)である。本コレクションの他の論文では、特定の神経細胞間の接続が、脳領域間のコミュニケーションや運動などの行動をどのように促進するのかについて明らかにしている。
これらの研究をまとめると、脳機能が脳回路の構造によってどのように決定されるかを研究することが可能となり、神経科学の研究に貴重なリソースを提供することになる。さらに、ショウジョウバエの脳の配線図を構築するために使用されたアプローチは、他の生物種における今後の大規模コネクトームプロジェクトの土台となる、と著者らは結論づけている。
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doi:10.1038/s41586-024-07558-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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