気候変動:ジンベイザメへの船舶衝突の脅威が増加
Nature Climate Change
2024年10月8日
高排出シナリオでは、ジンベイザメが船舶と衝突する可能性は今世紀末までに最大15,000倍に増加する可能性があるモデリング研究を報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。気候変動による海洋の温暖化により、世界最大の魚類である絶滅危惧種のジンベイザメは、より冷涼な環境へと移動を余儀なくされ、船舶との衝突のリスクが高まると、著者らは指摘している。
海洋生物は、特に気候変動による温暖化の影響を受けやすく、その結果、これらの種は一般的により冷涼な極地へと移動する傾向にある。このような再分布は、気候変動から種を守るかもしれないが、一方で、漁業による乱獲や船舶との衝突といった別のリスクに晒される可能性もある。ジンベイザメはすでに、表層水域を利用し、海洋交通との生息域の重複率が高いことから、船舶との衝突に特に遭いやすいことが知られている。
Freya Womersleyらは、2005年から2019年の間にタグ付けされた348頭のジンベイザメの衛星追跡データと、地球規模の気候モデルを組み合わせて、世界の海洋におけるジンベイザメの現在の生息環境と将来の適性を評価した。著者らは、これらのモデルと海上交通を組み合わせ、人間とサメの衝突による潜在的なリスクを評価した。2100年までに、高排出シナリオ(SSP585;SSP:Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)では、ジンベイザメの生息地の50%以上が失われ、1,000キロメートル以上も極方向に移動すると、著者らは予測している。さらに、Womersleyらは、高排出量シナリオでは、ジンベイザメと大型船の同時発生率が現在よりも15,000倍も高くなるため、衝突事故が増加する可能性があると報告している。排出量の少ない持続可能な開発シナリオ(SSP126)では、この頻度は依然として現在よりも20倍高くなると予測されている。
著者らは、ジンベイザメが示す気候変動による移動や、それに伴う船舶航路との交差などの危険性は、子ザメの餌場を減少させるなど、個体群全体に影響を及ぼす可能性があると結論づけている。この発見は、絶滅危惧種の保護には、気候変動のリスクだけでなく、その他のストレス要因も考慮する必要があることを示している。
Womersley, F.C., Sousa, L.L., Humphries, N.E. et al. Climate-driven global redistribution of an ocean giant predicts increased threat from shipping. Nat. Clim. Chang. (2024). https://doi.org/10.1038/s41558-024-02129-5
doi:10.1038/s41558-024-02129-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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