気候変動:山火事の煙に関連する人間の死亡率の増加
Nature Climate Change
2024年10月22日
気候変動により、1960年代から2010年代にかけて、山火事による煙に関連する人間の死亡者数の割合が約10倍に増加した可能性があるモデリング研究を報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。南米、オーストラリア、ヨーロッパ、およびアジアの北方林が、最も高い死亡率の地域であることが判明した。
森林火災の煙やその中に含まれる微粒子(PM2.5、すなわち2.5マイクロメートル以下の微粒子状物質)は、人間の健康に脅威をもたらすことが知られており、最近の推定では、火災に関連する煙により毎年世界で98,748人以上が死亡しているという。積極的な火災管理と鎮火活動により、過去数十年間は火災の発生件数は減少しているが、気候変動により、火災が発生しやすい季節の長さと世界的な焼失面積は増加している。
Chae Yeon Parkらは、3つの火災植生モデルを使用して、1960年から2019年にかけて世界的に有害な火災排出物の変化を調査した。著者らは、過去の観測を再現するシミュレーションと、過去の気候変動を除外した仮説モデルを比較し、対照とした。Parkらは、使用したモデルによって異なるが、1960年代には、火災による死亡の約1–3%が気候変動に起因するものであり、2010年代には、5–28%が気候変動に起因するものであることを発見した。これにより、気候変動による超過死亡者数は、1960年代の669人未満から2010年代には12,566人に増加すると予測された。気候変動に起因する火災の増加は、主に熱帯林や草原、北米の温帯林、ヨーロッパの地中海森林、および北方林の近くで発生している。大気輸送と暴露人口の影響により、気候変動に起因する死亡率は南米、アフリカ北部、ヨーロッパ、およびアジアの北方林の近くで最も顕著であることが分かった。
著者らは、気候変動と火災(そしてそれによる微粒子)の間の直接的な因果関係を世界レベルで特定することは、燃料の入手可能性や気象パターンなど、いくつかの変数があるため困難であることを認識している。しかし、特定の地域では気候変動と火災による死亡率の間に明確な関連性があることを立証したと主張している。同様に、Parkらは、この研究で使用された3つのモデルでは、微粒子物質と死亡率の関係における因果関係のレベルに違いが見られたものの、特定の地域では3つとも一貫した傾向を示したと指摘している。
Park, C.Y., Takahashi, K., Fujimori, S. et al. Attributing human mortality from fire PM2.5 to climate change. Nat. Clim. Chang. (2024). https://doi.org/10.1038/s41558-024-02149-1
doi:10.1038/s41558-024-02149-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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