環境科学:作物の残渣焼却に対する制裁はその影響を反映
Nature
2024年10月24日
パキスタンとインドの官僚は、作物の残渣(ざんさ)焼却による悪影響が国境を越えてではなく、自らの管轄地域で感じられる場合、より高い確率で制裁を課す傾向にあることを報告する論文が、Natureに掲載される。この調査結果は、その行為が環境と公衆衛生に与える地理的な影響によって対策が異なることを示しており、より効果的な規制の実施方法についての洞察を提供している。
大気汚染は、世界的に健康に大きな脅威をもたらしており、特に南アジアでは地球上で最大規模の公衆衛生上の緊急事態のひとつとなっている。冬の収穫期には、この汚染の約40-60%が作物の残渣の焼却によるものである。違法であるにもかかわらず、次の作物の準備の際には、この安価で手っ取り早い方法を使い続ける農家もある。
Gemma DipoppaおよびSaad Gulzarは、行政の対応が穀物の野焼きにどのような影響を与えるかを理解するために、北インド亜大陸の地区の行政境界線上で、約1,800万件の観測に相当する10年分の火災と風の衛星データを評価した。著者らはこれらのデータを、農作物火災に対する官僚の行動分析と組み合わせた。仮説としては、地元の官僚は、農作物火災による汚染が自分たちの地元地区に吹き付ける場合、つまり、責任を問われる可能性がある場合の方が、そうでない場合よりも行動を起こすインセンティブが高いというものである。全体として、風が隣接地区を汚染する方向から地元地区を汚染する方向に変わった後、農作物火災の件数は10-13%減少することが分かった。この効果は、官僚間の調整が存在しないインド・パキスタン国境では5倍に拡大することが観察されており、行動の有無がもたらす影響をさらに浮き彫りにしている。
これらの調査結果は、地元の地区における作物焼却の影響によって動機づけられた官僚の行動が、焼畑のパターンに影響を与える可能性があることを示している。著者らは、健康への悪影響、特に大気汚染による乳幼児死亡率の上昇を考慮した場合、官僚の行動の重要性を強調している。また、著者らは、作物火災を減らすための対策が講じられれば、1,000人の子供につき、1.8-2.7人の死亡を防ぐことができると推定している。
Dipoppa, G., Gulzar, S. Bureaucrat incentives reduce crop burning and child mortality in South Asia. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08046-z
doi:10.1038/s41586-024-08046-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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