保護:深刻な絶滅の危機に瀕するスマトラトラに対してより大きな保護が必要
Scientific Reports
2024年10月25日
カメラトラップによるモニタリングでは、2020年から2022年の間、インドネシアのスマトラ島にあるウル・マセン(Ulu Masen)生態系で、子トラの姿は確認できず、わずか11頭のスマトラトラ(Panthera tigris sumatrae)が確認されたに過ぎないことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。観察されたトラの多くがオスであったことは、深刻なレベルの密猟が行われていることを示唆しており、この絶滅危惧種に対するモニタリングの強化と的を絞った保護の必要性が急務であることを明らかにしている。
スマトラトラは、最も希少なトラ亜種のひとつであり、野生に生息する個体数はわずか400頭ほどである。しかし、トラの最大70パーセントは、国立公園外の保護されていない地域に生息しており、個体数データはほとんどない。ウル・マセンはトラの重要な生息地であるが、国立公園の一部ではなく、トラの調査は不十分である。
Joe Figelらは、52か所のカメラトラップステーションのデータを使用し、2020年から2022年の間に、スマトラトラとその獲物(サンバー、カモシカ、イノシシ、およびインドキョンを含む)のウル・マセンにおける初の生息状況評価を実施した。6,732夜にわたる記録で、トラは39回確認され、著者らは11頭の個体を特定した。その内訳は、オス8頭、メス1頭、および性別不明2頭である。この期間中に子トラは確認されなかった。3本足のオスを含め、2回以上確認されたトラは3頭のみで、2020年に確認された個体のうち、2022年に再び確認されたものは1頭もいなかった。トラは調査地域の52パーセントに生息していると推定された。大型であることからトラの主な獲物となるサンバーは21カ所のカメラで確認され、キョンは48カ所で確認された。
11頭のトラの存在は、ウル・マセンにかなりの数のトラが生息している可能性を示唆しているが、繁殖可能なメスの不足と高い個体群の入れ替わり率は、健全な個体群の指標とはならない。著者らによると、これらの特徴は、一般的に深刻な密猟のレベルを示している。そして、著者らは、この地域におけるトラの保護を強化し、560人から640人の訓練を受けたレンジャー(自然保護官)を配置することを提案している。また、トラの個体数の動態をより正確に把握するために、トラの性別を特定することに特に重点を置いた、より包括的なカメラトラップによるトラのモニタリングも推奨している。
Figel, J.J., Safriansyah, R., Baabud, S.F. et al. Intact, under-patrolled forests harbor widespread prey but a male-biased tiger population in the Ulu Masen Ecosystem, Sumatra, Indonesia. Sci Rep 14, 23612 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-75503-0
doi:10.1038/s41598-024-75503-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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