惑星科学:火星の岩石堆積物は太古の海の名残かもしれない
Scientific Reports
2024年11月8日
火星の表面に見られる堆積鉱物層は、35億年前に存在した太古の海の名残である可能性がある。Scientific Reportsに掲載されるこの発見は、星の南極域にある「ユートピア」と呼ばれる地域の沿岸域(または海岸線)に一致する特徴が存在することを示唆しており、惑星の歴史の初期に短期間存在した海の存在を示すさらなる証拠となる。
中国の火星探ローバー「祝融(Zhurong)」は、2021年5月の着陸以来、火星の北半球にある低地の平原「ヴァスティタス・ボレアリス(Vastitas Borealis)」の地表の堆積物を分析している。これまでの研究では、この地域の物質は洪水や海洋堆積物に由来する可能性があり、火山活動による物質よりもこの環境に適した細かい粒子サイズであることが示唆されている。
Bo Wuらは、軌道衛星と祝融ローバーから取得したデータを分析し、ユートピア平原(Utopia Planitia)南部で発見された物質の表面年齢と鉱物組成を推定した。著者らは、沿岸地帯に一致する谷や堆積物流路などの明確な地形学的特徴を特定し、約36.8億年前の洪水を伴う形成イベントの可能性を示唆した。このシナリオでは、短命の氷の海が海岸線を形成し、約34.2億年前に海面が凍結して消滅した可能性が高い。
著者らは、祝融ローバーによる現地測定では古代の海の存在を示す直接的な証拠は得られないと警告しているが、南のユートピア平原に大量の水が存在した可能性を示すこの発見は、火星の気候の進化に関する私たちの理解を深めるものである。この研究は、古代の水の貯水池の存在の可能性と、それが火星の地質形成に果たした役割を調査する将来のミッションのための潜在的な着陸地点を示唆している。
Wu, B., Dong, J., Wang, Y. et al. A probable ancient nearshore zone in southern Utopia on Mars unveiled from observations at the Zhurong landing area. Sci Rep 14, 24389 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-75507-w
doi:10.1038/s41598-024-75507-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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