食品科学:世界各地の料理法と使用食材の相性
Scientific Reports
2011年12月16日
「フードペアリング」理論によれば、2つの食材を組み合わせておいしいと感じられるのは、個々の食材が類似の風味化合物によって構成されている場合だとされる。この理論は、分子ガストロノミーにおいて、Heston Blumenthalなどのシェフによって活用されることがあるが、その系統的な検証は行われていなかった。 今回、S Ahnert、A-L Barabasiたちの研究チームは、381種の食材と各食材の風味に寄与することが知られる1,021種の風味化合物による「風味ネットワーク」を構築した。このネットワークでは、2つの食材に共通する風味化合物が多ければ多いほど、両者間の結びつきが強固になるようにした。次に、Ahnertたちは、3か所のオンライン情報サイト(そのうち、2か所が米国で運営され、1か所が韓国で運営されている)に掲載されているレシピにおける食材の組み合わせを分析して、異なる地理的領域の料理に統計的に優位な差が認められるかどうかを調べた。その結果、共通の風味化合物を含む食材を好んで用いる傾向のある北米と西欧の料理には、フードペアリング理論が妥当すると考えられたが、その他の地域、例えば、東アジアや南欧では、同じ風味化合物を含む食材を系統的に避ける傾向が見られた。 近年、生物学と社会科学の特定の領域で、データ主導型のネットワーク解析が大いに役立ってきている。今回の研究は、ネットワーク理論によって、食品科学など新たな分野で新たな知見が得られる可能性を示唆している。
doi:10.1038/srep00196
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