遺伝学:大きさを犠牲にすることなく、より甘みを増したトマトの開発
Nature
2024年11月14日
トマトの2つの遺伝子を変化させることで、重量や収穫量を犠牲にすることなく、甘くできることを報告する論文が、Nature に掲載される。この発見は、トマトの糖分蓄積の遺伝的および分子的メカニズムを解明する手がかりとなる。
ほとんどの消費者は、より甘いトマトを好み、糖度がより高くなるとトマト加工業界にとって経済的価値が高まる。しかし、遺伝的関連性により、トマトの甘さと大きさを両立させることは難しいことが多い。トマトが栽培化される過程で、育種家たちは果実の大きさを優先してきたため、野生種と比較して果実の大きさは10– 100倍にもなったが、その代償として甘味が失われた。現代のトマト品種改良の重要な目的は、果実の糖度を高めつつ、少なくとも果実の大きさは維持する、あるいは、大きくするというもので、これは困難な課題であることが証明されている。
Sanwen Huangらは、栽培種と野生種のトマトを比較し、トマトの糖蓄積の主要な調節因子として、SlCDPK27とSlCDPK26という2つの遺伝子を特定した。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質は、スクロース(ショ糖)の生成を担う酵素と相互作用し、その分解を促進する。研究チームは、CRISPR技術を用いてトマトのSlCDPK27とSlCDPK26をノックアウトし、植物の重量や収穫量を減らすことなく、果実中のグルコース(ブドウ糖 )とフルクトース(果糖)のレベルが最大30%増加したことを報告している。しかし、遺伝子編集されたトマトは、種子の数が少なく、かつ軽かったが、種子の健全性と発芽率への影響は最小限にとどまったという。
また、著者らは、SlCDPK27とSlCDPK26がさまざまな植物種で保存されていることを発見しており、この発見は他の作物にも応用できる可能性を示唆している。同時掲載のNews & Views記事で、Amy Lanctot と Patrick Shihは、「この研究は、果実における資源の分配の理解と、世界的な作物改良への影響という点で、非常に大きな前進である」とコメントしている。
Zhang, J., Lyu, H., Chen, J. et al. Releasing a sugar brake generates sweeter tomato without yield penalty. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08186-2
doi:10.1038/s41586-024-08186-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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