Research Press Release

天文学:金星に地表の海が存在したことは一度もないかもしれない

Nature Astronomy

2024年12月3日

金星の内部は、その歴史の大半において乾燥していた可能性があり、かつて金星に液体の表層海洋が存在したとする仮説に疑問を投げかける論文が、Nature Astronomy に掲載される。

金星は、平均表面温度が約465℃、地球の海面気圧の90倍という、生命が生存できない惑星である。しかし、その過去の環境については依然として不明な点が多い。地球や火星では、水が長い年月をかけて地表の地形を浸食してきたが、金星の地表には水による浸食の明確な痕跡は見られない。これまでの研究では、金星は常に乾燥し、生命が生存できない環境であったのか、それとも地表に液体の水の海が存在したことがあったのかについて議論されてきた。

Tereza Constantinouらは、火山活動中に放出されるガスと関連があり、惑星の内部の水分量を反映する金星の現在の大気を調査することで、金星の過去の歴史を解明した。著者らは、大気の観測結果を最もよく反映する金星内部の組成を特定するために化学モデルを使用した。その結果、惑星内部には水素がほとんど存在しないことが判明し、現在、地球内部よりもはるかに乾燥していることが示唆された。Constantinouらは、金星は海の形成に適した環境を経験したことがない可能性が高いと指摘し、大気中に存在した水は、惑星表面で凝縮することなく、最終的に宇宙空間に逃げてしまう前に水蒸気として存在していたと推測している。

著者らは、金星に似た系外惑星は、液体の水や居住可能な条件を持つ可能性が低いと示唆している。

Constantinou, T., Shorttle, O. & Rimmer, P.B. A dry Venusian interior constrained by atmospheric chemistry. Nat Astron (2024). https://doi.org/10.1038/s41550-024-02414-5
 

doi:10.1038/s41550-024-02414-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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