Research Press Release

気候変動:世界的な観光産業による二酸化炭素排出量は増加し、不平等である

Nature Communications

2024年12月11日

世界的な観光に関連する二酸化炭素排出量は、需要の高まりと技術効率の向上の遅れにより、過去10年間で増加していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。2009年から2020年のデータに基づくこの調査結果は、観光産業を地球規模の気候目標に整合させるための効果的な政策措置が急務であることを指摘している。

観光業は、世界的な二酸化炭素排出の主な要因である。この分野の急速な成長と、特に輸送手段に関連する二酸化炭素集約的な性質が組み合わさることで、世界的な排出削減の取り組みに課題を突きつけている。観光業による二酸化炭素排出の主な要因を理解することは、この分野の環境への影響を緩和するための戦略を策定する上で極めて重要である。

Ya-Yen Sunらは、175カ国のデータを使用して、2009年から2020年までの世界の観光による二酸化炭素排出量を包括的に分析した。その結果、世界の観光による排出量は、毎年3.5%増加し(世界経済全体の増加率である年1.5%の2倍以上)、2019年には、5.2ギガトン(52億トン)に達することが分かった。これは、世界全体の温室効果ガス排出量の8.8%に相当する。この成長の主な要因は、技術効率の緩やかな向上(年間0.3%)と、持続的な観光需要の高い成長(2009年の定数価格で年間3.8%)であった。また、この研究では、一人当たりの観光による排出量に著しい格差があることも明らかになった。米国、中国、およびインドなど、排出量の多い上位20ヶ国が、総排出量の4分の3を占めている。

これらの調査結果は、観光による排出量を抑制するための緊急な対策の必要性を強く示唆している。技術の向上により、いくらか削減はされているものの、観光需要の急速な増加を相殺するには不十分である。また、この研究では、世界的な排出量削減政策を立案する際に、経済格差を考慮することが重要であることも示している。

Sun, YY., Faturay, F., Lenzen, M. et al. Drivers of global tourism carbon emissions. Nat Commun 15, 10384 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-54582-7


 

doi:10.1038/s41467-024-54582-7

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